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天王寺の変 五の章

参差錯落 肆 その4

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それだけを瞬時に読み取った近藤に、後ろからタンクが聞いてきた。

 「どや? イケるんか?」
 「ハイ! イケるっス!」

その答えに、一番頭に来たのはカンジ。
一連の動きには圧倒されたが、もう落ち着いている。

こんなチビには負けない。

空手家だろうがなんだろうが、負けない!
腰に付けてた警棒を抜き、伸ばす。

 「お!」

素早く近藤がチェック。
構えを確認。
右手で握った警棒に、左の手を添えるかどうか微妙な位置。

 「はは~~ん」

アイツは剣道やってたなと、近藤は見た。
竹刀より持ち手が短い。
というか無いので、左手をどうすれば良いか解らなく剣道家だ。
さすがケンカでは負けた事無いと言うだけあって、色んなタイプの相手と戦ってきた経験の蓄積が、近藤にはあった。

 「出過ぎるな」

西下に言われ、カンジの顔が”?”マークになった。

 「かなりしたヤツだ」
 「え?」

西下も、幾度かの修羅場は経験している。
そこから、近藤の力を読み取っていた。

 「は躊躇なんか無い。
  人を殴る事を何とも思ってないからな」
 「自分も、、、」

変に勝気になっているカンジを止めた。
カンジは入って間もない。
他のグループとの衝突も初めてだ。
そんな時に変にやる気を出されると、きっと空回りする。
慌てるなと、カンジに言いたかった。

 「そう言うヤツは、オマエがぞ」

忠告と冷静さを促した、先輩の言葉だった。
これは西下の体験談。
人を殴る事に躊躇の無い人種は、こちらがイメージするより拳や蹴りが速い。

初めてストリートファイトをした時に感じた、“実戦”の感覚だ。

負けた?

いやいや、苦戦したが西下は勝った。
お陰で選手権でも、その経験が活かされ全国へ行っている。

 (そうだ、、、勝てる

冷静に、的確に相手を攻めれば、蛇骨会の三人に、勝てる。
相手のEG使いが二人でも、勝てる。
西下が、大きく息を吐いた。

 「来い」

それだけ言うと、自分から近藤の方へ向かって行った。

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