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天王寺の変 四の章

紅朱同赤 陸 その23

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糸の問いに、まゆらも続く。

 「で、どうなん?」

珍晴は、笑う。

 「じっくり見せてもうたよ。
  観れば観るほどよう出来てんなぁ。感心するわ。
  速水颯太。
  彼が長くも無く短くも無く、
  キッチリ一年かけて丁寧に作ったんがよう解る。
  ひと言で言うなら、、、」
 「言うなら?」
 「確かあの時も言うたけど、潰すの勿体もったいない!」
 「!」
 「あ、今ムッとした~」
 「珍晴ぼん、調子に乗ってるとぶっ殺しますわよ、
  とうちのまゆらが、、、ムギュ!」

まゆらの表情は珍晴を睨んだまま、それでも口調は変わらない。

 「正直迷うよね~。此処ここを使えば呪の効力を
  落とさず、無尽蔵むじんぞうに使える。
  術師にとってこれ以上に無いEGの磁場。
  正直うちが独占で欲しいくらいや」

さらにまゆらの眼が、細くなる。

 「ブン捕る気ぃか? 他のEG使いを殺して、、、」
 「まさか。無理無理。
  そんな考えはEGを使える人だけや。
  ボクはただの道具屋やで。
  そんな大層なこと考えもせぇへんわ~」
 「ざ~~とらしぃ」

糸の意見に、まゆらも同意。

 「嘘つけ」

二人にそう言われても、にっこり珍晴。

 「そうそう、もう弁天町にはもう行った?」
 「!」
 「確かまだ履行されてないよな。継続中やろ。
  加茂家うちから御門系そっちに依頼してる謀反者の捕縛。
  それもえぇ加減進めて欲しいな~。
  動いとんのは”風”やけど、こう言う話は『安倍まゆら』やなく、
  『土御門繭ら』さんと呼んだ方がえぇんかな?」

まゆらを囲う、空気の密が上がる。
同時に、EGが濃くなる。

 「すごい凄い! これやからたまらんわ! 
  やっぱボクの結婚相手は、
  まゆら以外考えられへん!」

ローキック。

 「?!」

まゆらの足は、空振りをした。
あったハズの珍晴の足が、煙のように形を崩す。
ワザとらしい笑い声が上がると、その珍晴の身体が風に揺られて溶けて行く。

 「!」
 「ぼんめ、、、。何時入れ替わりよった? 
  新しい道具かいな?」

今まで珍晴が立っていた場所を睨むも、残るのはワザとらしい笑い声。
憎々しく吐いた糸の言葉も、虚しく空に流され、消えて行った。

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