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天王寺の変 四の章
紅朱同赤 陸 その5
しおりを挟む話し掛けたのに全く隙を見せてくれないまゆらに、呆れ気味になった三木が素直に言う。
「いい加減、その指を下ろしてくれないか?」
手の甲側を下に伸ばした、まゆらの右手の指だ。
人差し指と中指。
三木が指摘した、トリガー。
「こ、この結界は、、、ななんしとう?」
男性と話すのが苦手なまゆらは、ちょっと噛んでしまい照れる。
戦闘中なのに。
それが可笑しくて、糸は笑いを堪えるのに必死だ。
むぎゅぅぅぅ。
握られた。
笑いを堪えてるのがまゆらにバレて、左掌を握られた。
「もう何やのんさぁ!
勝手に噛んで勝手に赤ぅなっとんのは
まゆらちゃんやろ!
そんでいちいちむぎゅってされたら
たまらんわ!」
「うううううっさいねん!」
二人のやり取りに、三木が真面目な顔で聞いてきた。
「仲、、、悪いの?」
「うっさいねん!」×2
「あ、あぁ。良いんだね、、、」
しばし無言。
気まずい空気。
まゆらが、おずおずと左腕を前に出す。
指を全部開いて、掌の正面を三木に向けた。
三木が見ている目の前で、手のひらの肉がざわざわと動き出す。
「!」
動き出したら、まゆらのその手のひらに、顔が浮かび上がった。
立体的に、デスマスクのように浮かんだ浮腫の顔は、この異様な状態にあっても、美しいと認識できてしまうほどの美貌。
ただ、その額から右眼を通って顎まである傷、それと両眼が針金のような堅い材質で縫い付けられているのを除けば、、、。
「暦糸姫、、、史上最高位の“唱える者”が、、、」
唱える者。
呪言系の術師で、この名を知らない者は居ない。
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