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天王寺の変 四の章

紅朱同赤 伍 その1

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浪速日本橋郵便局の中、管理者はもうとっくに居ない。

けれども腕が痛くて動けなかった。
管理者に貰った救急箱の中に入っていた包帯でグルグル捲きにした腕が、やっと血を流すのに飽きたようだ。

それでもその左腕は、震えが止まらない。

 「すまない。オレのせいだ」

もう何回聞いたか、、、。
責任を感じるのは解るが、しつこいのは嫌われるよ、と教えてあげたかった。

 「謝らなくて良い。
  オマエを止めるのも私の役目のひとつだ」

李楠りなん駱嘉らくかの顔を見ながら、何度も謝る大柄な部下をたしなめた。

改めて、見る。
真正面から恥ずかしげもなく、自分を見つめる駱嘉のすまなそうな顔がカワイイ。

 (と思ってしまう私は、やはり駱嘉がタイプ、、、
  なのか?

自問自答。

李楠は顔が赤くなるのを察知し、話題を振った。

 「え、え~と、どうしよっか」
 「何がですか?」

聞き返したのは、范蘇円はんそえん

 「管理者との契約は、まぁ、上手くいったわ。
  二人に感謝ね」
 「私は何も、、、」

 (してねぇよな。確かに

と、范蘇円へのツッコミは厳しい。

 「管理者に貰ったスマホ、使ってみないか?」

駱嘉と范蘇円が互いに見合った。
そして呼吸を合わせたように、李楠を見る。

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