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天王寺の変 三の章
稚知謀大 陸 その6
しおりを挟むもう一度、右の手を高輪流の髪に伸ばした。
止まってしまう。
自分の考えさえ、自分の思い通りにはいかない事に意地になった。
意地になって、手を伸ばした。
触った。
、、、触れた。
大した事は、無かった。
少し硬くなった髪を、おでこから耳に流れるように梳いた。
(出来るやん
薄っすらと、笑えた。
「流、、、」
呼んでみた。
あの時、呼び捨てでイイよって言ってくれたから。
あの時、呼べなかった自分が、今この状態なら呼べることに腹が立った。
(あぁしって、何なんやろ
とりあえず、助けようと思った。
このひとだけは、絶対に助けようと思った。
「行って来うね」
踵を返し、後ろ手に病室のドアを閉めたまゆらの足は結界へと向かっていた。
その約一時間後、阪急梅田駅にまゆらの姿があった。
そこからJR大阪駅を横手に梅田の交差点を堂々と御堂筋を通り、結界内に入っていった。
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