カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~

后 陸

文字の大きさ
上 下
18 / 40
水の中のグラジオラス 二の章

偽風道落 壱 その2

しおりを挟む

 サイラーが根城ねじろにしている天王寺のマンション。
 入ろうとしたら、止められた。

 「何で?」

 心の声が、そのままモコののどを通ってた。
 モコとサイラーは知り合い。
 蛇骨会のメンバーも周知。
 しかも今、眼の前に立っている男の顔をモコは知っているし、男、沢部も当然モコの事を知っている。
 何度も話しをした事もある。

 それにたとえ知り合いで無くとも、“くれいじー・モコ”の名は、結界内で超有名。
 ポスにもしっかりってるし、出入口を見張るしたの沢部が力で止められるはずもない事ぐらい解かる。

 解かるが、止める。
 何故か、、、?

 「モコさん、サイラーさんが、んスよ」
 「、、、は?」

 話す沢部も、どう説明すれば良いのか解らないままモコに話していた。

 「サイラーさん、、、何か違うんスよ。こないだ通天閣のモータルフラワーと戦争やったでしょ? それから、やっぱ何か違うんスよ。多分、ヤられたんちゃうかなって思ってます。だって今のサイラーさんって、違うんスよ、、、」

 沢部がいったい何を言いたいのかが解らなかったが、モコに何かを伝えようとしてるのその真剣さで伝わって来た。

 「多分、今るのんは、です。俺だけやなく、そう思ってるヤツらも少なないし、、、。ホンマもんのサイラーさん、いつの間にからんようになって、今るサイラーさん、何かヤバいんスよ」

 沢部は先日、通天閣のモータルフラワーとの戦争の時に現場に居た一人だ。
 沢部の記憶では、何故か急に妙にになり、とある女を追い掛けまわしてた。
 追い掛けまわして気持ち良くなってたら、一瞬眼の前が光って急に意識が飛んだらしい。
 その後はもう、何も、憶えていない。
 気が付いたら、地面に倒れていた。

 朦朧もうろうとする意識の中で周りを見ると、他のメンバーも地面に倒れてピクリとも動かなかった。
 自分はなんだと、その時解かった。

 その時、まだ頭がクラクラしながらも沢部が見た景色は、サイラーがデンタイのJKに何処どこかに連れて行かれるところだった。

 ただ、見る事しか出来なかった。

 その後沢部は他のメンバーたちと、残ったデンタイの二人に促さるまま警察に連行され、顔写真と指紋をバッチリ採られた。
 解放されたのは、完全に朝になってからだった。
 行くところも無く、沢部を含めメンバーのほぼ全員がマンションに帰る。
 帰ると、もうそこに

 居たのは、

 見た目は確かに、サイラーなのだが、どこか違う。
 とにかく変なのは、これまで見た事の無いをする。

 いつも何かに怒りを撒き散らしていたサイラーじゃない。
 不意にヘラヘラと卑屈に笑う。
 そんなサイラー、気持ち悪い。

 よく見たら、サイラーの近くに居る連中も、時折同じように卑屈に笑う。
 見ると、不快になる卑屈な笑い。

 それをもんだから、もしかしてサイラーと側近たちは、変な宗教に染まったか?
 なんて沢部は思ったりもした。
 沢部が、これ絶対おかしいな、、、と思ったのは、他のメンバーも沢部と同じような事を感じていたからだ。

 自分一人の思い込みでは無く、みんな思ってる事。

 その、変な雰囲気が、チーム内にどんどん広がって行ってる。
 それは小さな波だが、巨大な力で、いつか自分も呑み込まれるのだろうと確信めいたものが、沢部をビビらせていた。

 凶暴なサイラーが消えたので、チームを抜けると言い出した奴もいた。
 もちろん黙って、こっそり、、、。

 でも次の日、決まって長い棒の上に、裸で逆さ吊りされて死んでいるのを見る。
 チームを抜けるのは勿論もちろん、チームの輪を乱す言動が見つかると、、、正確にはチクられると、次の日には容赦なく逆さ吊りの刑。

 このあたりの団結力は、以前よりも強くなった。
 ヘラヘラ卑屈なお笑い集団は、似合わない鉄の掟で繋がっていた。

 「もうちょっとしたら、多分俺もヘラヘラし出しますわ。そん時は、モコさん、絶対俺に近づかんとってください。それもう、俺やないっスから、、、」

 沢部が笑った。
 確かに卑屈な笑いでは無かったが、どこか諦めを含んだ、湿った笑い顔だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カ・ル・マ! ~天王寺の変~

后 陸
SF
 新たに見つかった電波帯を使い、これまで不確かな存在だった霊体を視覚化しコンタクトに成功。  この電波帯をEG帯と呼び、霊体を自在に操る者たちをEG使いと呼んだ。  四ヵ月前に大阪で起こった巨大結界事件後、環境が激変した結界内で争うEG使いたち。  その争いに巻き込まれる主人公、安倍まゆらの話し。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...