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こぎつね
しおりを挟む降り積もる雪の中で、あなたをみつけた。
雪と同じ真っ白な毛。自分でもよく見つけたものだと後から思った。
その時はそんなことを考える余裕もなくて、あなたに慌てて近づいてから抱き上げた。
シンシンと降り積もった雪が、あなたを覆ったのかキンキンと冷たくてまるで氷のようだった。
大慌てで雪に足を取られそうになりながらも家に転がるように帰ったのを覚えている。
あなたがあんまり冷たいから、温かいお湯でいきなり温めたら死んじゃうんじゃないかって、適温の水から温く温かく少しずつ温かくしていったら、あなたはやっと身を震わした。
少し経ってから、少しずつ目を開いていくあなたに喜んだの。そして、あなたがこちらを見たときに世界の音が消えた気がしたわ。
あなたの目は透き通る湖を思わせる色彩だった。
この世にこんなにも綺麗な色があるだなんて、あなたにあって初めて知ったの。
あなたはこちらを警戒するような眼差しで見たけれど、それだけで体力が尽きたのか、また目を閉じてグッタリしてしまった。
その時の私は動物病院の場所も連絡先も知らなくて、ただただあなたを温めることしか出来なかった。
夜は一緒の布団に入れて、抱きしめながら元気になってくれるように祈ったの。
朝、起きると、あなたはもう居なかった。
あんなに冷たかったのに。何処かで倒れてるんじゃないかって心配だった。
玄関まで自分でも飛んだんじゃないかってぐらいのスピードでいって、焦るあまり靴が上手く履けなくて、余計に時間をかけながら外に出た。
外に広がる雪の上は一面真っ白で、あなたの足跡は見つかりそうになかった。
ともかく、埋まっていたらと心配で掘り返したけれど、あなたは見つからなかった。
近所の人に「無くしものかい?」と聞かれたけれど、私はなんて言えばいいか分からなかった。
「真っ白くて青い目の動物を探している」というと、「青い目の動物なんていたかなあ」と首を傾げられた。
そのあと、どんなに探しても見つからなかったから、今も生きているって思うことにしてる。あの可愛い子とは一夜限りの遭遇なのだ。
私もあの子を温めることに集中しすぎてうっかりしていたのか、あの子の特徴をちゃんと見ていなかったから種族さえよく分からない。
だから、一番似てそうなので呼ぶことにした。
響きも可愛いから、きっと、あの子に似合うだろう。
何年経っても、雪が積もるたびにあの子のことを思い出す。
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