小話まとめ(ファンタジー)

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絵に住まうもの

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「よいしょっと」

 壁に掛けられた絵の中から額縁を跨いで、床へとピョンと跳んで着地した。

 フルフルと横に顔を振ると、頭の上の長い2つの耳もパサパサと動いた。

 絵の中では後ろ足で立ち上がっている姿だが、移動する時は基本的に4つ足である。

 駆けるように夜で暗くなっている廊下を走った。

 目当て物まであと少しである。

 目の先に白い物体が見えてきた。縦長な箱。
 一番下の所を開けると、ひんやりと冷たい風がふいてきた。

 緑色の葉っぱを退けて、目当ての物を見つけた。

 そう、オレンジ色で縦長の野菜。

 それを口に咥えて、タタっとさっきまでの道を戻っていく。

 ピョンと飛び跳ねて、額縁を超えて絵の中に入った。これで安心である。



 朝日が昇り、大きな人間が起きてきた。

 オレンジ色の縦長の野菜を見つけた白い縦長の箱を開けて、「あ~~!!?」と叫んでいた。

「ちょっと!誰よ、人参を食べたの⁉︎」

 小さい人間がその声を聞いて、パタパタと走ってきた。

「どうしたの?」

「お弁当用に買ってた人参が無くなってるの~‼︎食べた??」

「食べてないよ、別に人参好きじゃないし」

「そうよね~え~~無意識に使ったのかなあ」

 大きい人間の嘆く声が聞こえた。

 小さい人間は頭を捻って辺りを見回して、壁に掛けてある絵の方向を見た。

 絵をじーっと見つめて、「あ~~!!」と叫んだ。

「ママ!ウサギが人参咥えてる!!」

「え???ウサギが人参を??」

 とられたら困るので急いでムシャムシャ食べた。

「ママ!ウサギが人参食べちゃってる!!」

「ウサギって何処よ?」

「ウサギ!あっち!!」

 大きな人間が壁に掛けてある絵に近づいて、じっと見てきた。

「ウサギ、人参食べてないよ??」

「さっきまで!食べてたんだって!!」

「ん~~??寝ぼけてるのかなぁ??」

「寝ぼけてないよ!!」

 ギャーギャーと小さい人間が騒いでいた。

 人参っていうのかこれ。美味しくてとても気に入っていた。

 今日も人参が食べたいと思いながら、絵の中でキメポーズで立っていた。
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