次郎と俺のハナシ

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4章 星灯の都市にて

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 港町で1日民泊をすることにした。

 少し休憩したら、蒸気機関車に乗って中央へと向かう予定だったが、立て続けに慣れない乗り物に乗るには疲れた様子のミーナが心配になったからである。

 俺と母は船の旅を楽しんだが、ミーナは船に居た猫達とのパトロールで忙しかったのだ。

 ミーナはパトロールを楽しんでいる様子ではあったが、今はすっかり母に抱き抱えられて甘えていた。

 猫と一緒に泊まれる宿であり、町の人にオススメされたそこは、普通の二階建ての一軒家であったが、黒猫の形をした看板が扉につけてあった。

 猫好きなのかもと嬉しくなりつつ、宿泊手続きをした。案内された部屋でミーナは俺のベットが気に入ったのか早速布団の中に入って見えなくなった。

 ミーナは布団の民になってしまったので、俺と母で外に出た。活気に溢れる人々に港町だからだろうかとも思ったけれど、水の城の海辺の街よりも一段と盛えている雰囲気であった。

 焔の山での旅は刺激的で圧倒されているうちに時間があっという間に流れてしまったから、今回の旅もそうなるかと思っていたのに、緩やかな気持ちになっている自分に少し驚いていた。

 見たことのない風景に楽しみを感じているが、母とミーナがいるお陰か、日常と非日常が入り混じっているような感覚であった。

 気持ちがとてもリラックスしているし、ふとしたことに目がいった。

 空にある綿菓子のような雲、道の端にある蹴りやすそうな小石、通り過ぎる人のふとした笑顔とか。

 別に特別なものは何一つないのに、何故か久しぶりに見たような気分になるのが不思議であった。もしかして船を半月も乗っていたからだろうか。

 どれもこれも少し眩しく感じて可笑しくなった。


***

 次の日の朝、今日こそ蒸気機関車に乗るぞと考えながら、ベットから起き上がり支度をした。

 朝ご飯は駅近くで売っていた猫の顔の形をしたパンを買った。

 この町は猫好きなのか何気ないところに猫を感じられるのが面白かった。

 食べるの勿体ない気がするなあと思いながら歩いていると、目の前に蒸気機関車が見えた。

 蒸気機関車目当てに来たのに、パンに気持ちが奪われていたからか、猫のシルエットがないかつい確認してしまった。

 蒸気機関車の前上部に猫の耳のような形をしたものがつけてあって、なんだか嬉しい気持ちになり、パンは伏線だったのかと1人でうなづきながら、母とミーナと蒸気機関車へと乗り込んだ。

 母に、何だか嬉しそうだけど何か見つけたの?と聞かれたので、蒸気機関車に猫の耳生えてた、と伝えると、よく分からないけれど降りる時に見てみる、と言われた。

 次郎が描いてくれた絵の蒸気機関車には、猫の耳みたいなものなんてついてなかったから、最近ついたのだろうか。猫の耳みたいな触り心地なのかちょっと触ってみたいなという好奇心があった。

 見た目的にはどうにも堅そうだったが。

 思考が変な方向に行っている間に蒸気機関車は動き出した。

 船よりも速いスピードに驚きを隠せなかった。何処かへと飛ばされるんじゃないかと不安でいっぱいになったときにスピードが安定してきた。

 安定してくると、ジワジワと蒸気機関車に乗ったんだと何だか実感して、目の前にいる母とミーナを見た。

 母も感動した様子で、凄いわねえ、と仕切りにうなづいていた。ミーナは母の服の中に完全に隠れてしまった。

 ミーナの様子に気づいた母が、少し怖かったのかしらね、と服の上からミーナを優しく撫でていた。

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