次郎と俺のハナシ

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4章 星灯の都市にて

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 船に乗ってから半月後。やっと星灯の都市が見えてきた。

 船は今まで乗ったことがなかった乗り物だったので、やっと降りれると思うと少しホッとした気分であった。

 星灯の都市を一周するように走る大きな蒸気機関車。所々の停留所から星灯の都市の中央に向かう蒸気機関車も走っているらしい。

 星灯の都市の由来はまたもや一千年前の人がつけた。星の灯りが他とは比べ物にならない程綺麗だったのでそう名付けられたらしい。

 その頃には蒸気機関車が無かったのだろうか。あったら蒸気機関車の都市と呼ばれていた可能性が高い気がする。

 今はまだ太陽が天辺にいるので、国の由来である星が全く見えないが夜に空を見るのが楽しみであった。

 船が星灯の都市の港に近づいていくと、蒸気機関車から出るモクモクとした白い煙が見えてきた。

 まだ遠目にしか見えないが、黒くて長い乗り物である蒸気機関車。どうやって走っているのか検討もつかなかった。

 港町で少し休憩するつもりだが、蒸気機関車に乗るのがとても楽しみである。


***

 船乗りの兄さんと猫達に別れを告げて、港へと降り立った。

 地面に足がついているはずなのに、まだ揺れているような感覚があった。少し歩き出すまで時間がかかりそうである。

 船乗りの兄さんはこのまま星灯の都市の中央へと向かうらしい。

 さっきまで働いていたのに元気だなあと思ったが、待ちに待った休暇だと輝くような笑顔で去っていった。

 船乗りの兄さんには奥さんがいて、星灯の都市の中央でバリバリ働くキャリアウーマンらしく、そういったカッコいい所にも惚れたと船に乗っている間は惚気られた。船乗りの兄さんの話は後半殆ど奥さんのことばかりであった。

 その奥さんの元へと急いでいるのだろう。

 好きな人と一緒に居られる幸運に羨ましさを感じたが、俺の場合は次郎が生まれ変わって会いに来てくれたという奇跡があったので、そもそも比べるものでもなかった。

 けれど、それでもやっぱり羨ましい。

 次郎がもう一度生まれ変わってくれて側に居られたらと考えたこともあったが、その度に夢で見た次郎が深く寝ている様子を思い出して諦めるを繰り返した。

 奇跡を起こす代償が次郎の早すぎる死に繋がったかもしれないと思い至ったので、今度は長生き出来るように健康な身体で、俺と一緒に生まれ変わってくれたら嬉しいなと思っている。

 来世に期待しているが、今世も大切に生きると決めていた。次郎が生きた世界であって素敵な出会いが今までにも沢山あった。

 次郎が側に居ないことで心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになることもやっぱりあるが、それでも尚、この世界を愛おしいと思えるのは次郎が残してくれた冊子のお陰だろう。

 今回の旅にも持ってきた次郎がくれた冊子。背負っていたリュックを前に持ってきてそっと撫でた。

 次郎にも蒸気機関車やこの景色を見てほしくて、俺が見たものが次郎の夢で現れてくれたらいいのにと密かに願っていた。
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