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4章 星灯の都市にて
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次郎のために出来ることって何だろうと思ったけれど、いまいちピンとこなくて頭を捻っていたら1週間が経っていた。
いつの間にかミーナが次郎の母の家から帰ってきていて、俺の横に並び一緒に頭を捻り出したのを見て笑ってしまい、何だか気が抜けた。
もう旅に行く日になっていたなんてびっくりだった。
ミーナはご機嫌なのか尻尾を左右に振りながら母の周りを歩いていた。
母もご機嫌な様子で旅行に行く前に持っていく荷物や戸締りなどの最終チェックに余念がない。
ここ1週間の間に荷物の準備をしていた際には、ミーナのおもちゃグッズまで山程持って行こうとするので止めたことがあった。流石に手荷物として持って行くには重すぎる。
最終的にミーナのお気に入りのピンクの花柄のブランケットと先端が黄緑色でフワフワな形をしているねこじゃらしを持って行くことにした。
俺が小さい頃は母が仕事で忙しかったし、少し大きくなった頃には俺は砂の大陸に行っていたので、母とここまでの遠出をするなんて初めてのことだ。
自分が旅に出かけるだけだとあまり何も考えずに行くが、母と旅行をすると思うと何故か少し緊張してきた。
何だかソワソワしてしまうのでミーナを抱き上げて抱き締めた。揺れているミーナの尻尾が身体に当たった。
俺が、ミーナ、とミーナに声をかけると、何だという顔をされた。そのまま何も言わずに見ているとスルリと腕の中から出て行き、玄関の方まで行ってしまった。
ミーナは初めての遠出に緊張しないタイプなのかもしれない。
***
馬車に乗って前に来た海辺の街に到着した。
星灯の都市は島国であり、海辺の街から船で半月ほどの場所にある。
船には乗ったことがないので、今からどんな感じか少しワクワクしていた。
海辺の街は以前来た時からあまり変わらないが、かき氷屋は見当たらなかった。まだ暑い時期じゃないからかもしれない。
お世話になったから顔が見たかったと少し残念な気持ちになったが、星灯の都市からの帰る時期が丁度夏頃なので会える可能性がある。
今度は客として会いに行こうと思った。そんなに食べられないので精々1杯ぐらいだが。
海が目に入ると、海に花が浮かんでいる光景が一瞬見えた気がした。瞬き一つすると花は掻き消えたが、過去の光景がはっきりと脳裏に焼き付いていた。
以前に花を海に供えたことがこれ程にまで自分の中で息づいていると思わなくて、知らぬ知らぬうちに止めていた息を吐いた。
海を見るたびに今、抱いた感情を思い出しそうだ。少し口の中が苦く感じて笑ってしまった。
海の雄大さにも圧倒してしまっているのか、太陽に反射した海の光がやけに眩しく感じた。
息を大きく吸い込むと、潮風の匂いで身体中を包み込まれた気分になった。
以前、海辺の街に居た時は次郎の夢をよく見たので、今日も夜には次郎の夢が見られるかもしれない。
次郎、と海に声をかけた。当てがない言葉だが、ザザァと浜辺に寄せる波の音が返事をしてくれた気分になって何だか可笑しかった。
いつの間にかミーナが次郎の母の家から帰ってきていて、俺の横に並び一緒に頭を捻り出したのを見て笑ってしまい、何だか気が抜けた。
もう旅に行く日になっていたなんてびっくりだった。
ミーナはご機嫌なのか尻尾を左右に振りながら母の周りを歩いていた。
母もご機嫌な様子で旅行に行く前に持っていく荷物や戸締りなどの最終チェックに余念がない。
ここ1週間の間に荷物の準備をしていた際には、ミーナのおもちゃグッズまで山程持って行こうとするので止めたことがあった。流石に手荷物として持って行くには重すぎる。
最終的にミーナのお気に入りのピンクの花柄のブランケットと先端が黄緑色でフワフワな形をしているねこじゃらしを持って行くことにした。
俺が小さい頃は母が仕事で忙しかったし、少し大きくなった頃には俺は砂の大陸に行っていたので、母とここまでの遠出をするなんて初めてのことだ。
自分が旅に出かけるだけだとあまり何も考えずに行くが、母と旅行をすると思うと何故か少し緊張してきた。
何だかソワソワしてしまうのでミーナを抱き上げて抱き締めた。揺れているミーナの尻尾が身体に当たった。
俺が、ミーナ、とミーナに声をかけると、何だという顔をされた。そのまま何も言わずに見ているとスルリと腕の中から出て行き、玄関の方まで行ってしまった。
ミーナは初めての遠出に緊張しないタイプなのかもしれない。
***
馬車に乗って前に来た海辺の街に到着した。
星灯の都市は島国であり、海辺の街から船で半月ほどの場所にある。
船には乗ったことがないので、今からどんな感じか少しワクワクしていた。
海辺の街は以前来た時からあまり変わらないが、かき氷屋は見当たらなかった。まだ暑い時期じゃないからかもしれない。
お世話になったから顔が見たかったと少し残念な気持ちになったが、星灯の都市からの帰る時期が丁度夏頃なので会える可能性がある。
今度は客として会いに行こうと思った。そんなに食べられないので精々1杯ぐらいだが。
海が目に入ると、海に花が浮かんでいる光景が一瞬見えた気がした。瞬き一つすると花は掻き消えたが、過去の光景がはっきりと脳裏に焼き付いていた。
以前に花を海に供えたことがこれ程にまで自分の中で息づいていると思わなくて、知らぬ知らぬうちに止めていた息を吐いた。
海を見るたびに今、抱いた感情を思い出しそうだ。少し口の中が苦く感じて笑ってしまった。
海の雄大さにも圧倒してしまっているのか、太陽に反射した海の光がやけに眩しく感じた。
息を大きく吸い込むと、潮風の匂いで身体中を包み込まれた気分になった。
以前、海辺の街に居た時は次郎の夢をよく見たので、今日も夜には次郎の夢が見られるかもしれない。
次郎、と海に声をかけた。当てがない言葉だが、ザザァと浜辺に寄せる波の音が返事をしてくれた気分になって何だか可笑しかった。
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