次郎と俺のハナシ

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3章 焔の山にて

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 お婆ちゃんに渡された松明をそのままにしておく訳にもいかなくて、松明を振り回していたら、声を出せ!と周囲から野次が飛んできた。

 わ~、と小さい声で言っていると、もっと大きな声で!腹から声をだせ!と言われたい放題だった。

 焔の山に来たときのこの国の人々の優しさは、幻覚だったのだろうか。煽り方が凄いし、いつまで振り回せばいいのか分からない。

 5分ほどでへばると、根性入れろよ!とドヤす声や、まあ観光客にしては頑張った、と謎の上から目線など、これがこの国の洗礼なのだとしたら、焔の山を旅することへの不安感が募った。この試練を乗り越えられるだろうか。

 もしかして、占い師のお姉さんのお札を買ってればこんなことにならなかったのではという考えがよぎりながらも、這う這うの程で宿へ帰った。

 宿の受付の人の、おかえりなさい、がやけに身に染みた。

 部屋に戻って、砂の大陸の次郎の冊子を開けた。焔の山の旅行プランを念のため確認すると、最初にちゃんとキャンプファイヤーが書いてあった。

 俺はキャンプファイヤーがこんな街中に堂々とあるとは思っていなかったし、想像していたものと違いすぎて見間違いかもしれないと不安だったが、やっぱり書いてる。

 砂の大陸の次郎の旅行プランは、最初からハードルが高すぎた。
 よし、と気合を入れ直して、とりあえずベットで寝た。現実逃避であった。


***

 旅行はもちろん継続となった。せっかく次郎が書いてくれた旅行プランだし、この旅は独りじゃなかった。

 旅行を計画してくれた次郎はいないけれど、確かに俺と次郎との旅だった。

 次郎が行きたかった場所も含まれてるんだろうなと思うと、全て見てまわりたい。

 次郎へのお土産話が少しでも増えたら、次郎との会話がもっと盛り上がるかもしれないと思うと嬉しいからだ。旅の思い出が濃い内容であるほど喜んでくれるかもしれないし。

 異文化交流も大切に、と砂の大陸の次郎の冊子に目立つように書いてあったので。

 次郎に話したいことがこうやってまた一つ、増えたのだ。幸せなことだった。

 そんなことを考えながらも、問題にぶち当たった。世知辛い話だが、またお金が底をついた。

 旅行をしているとすぐにお金が無くなるんだなあと思いつつ、短期バイトがないか宿の受付の人に聞くと、宿の受付を任された。

 どうやら1ヶ月後に祭りがあるらしく、宿の受付の人は太鼓の奏者でみっちりと練習がしたかったから、丁度いいから店番してくれと言われた。情熱に溢れてる。

 1ヶ月の間は従業員用の部屋を借りれたし、賄いもついた。有難い限りである。

 宿の受付になってから驚いたのは、水の城の観光客が予想を上回るほど来ること。そして、とんでもなく手間がかかる。

 先日の自分の姿が思い出されて、気恥ずかしくなる。

 祭りが近い時期だから練習風景を観にくる観光客も多いのだとか。なんせ街中、もうお祭り騒ぎである。

 本番は1ヶ月後なのに、1ヶ月後はどうなってるのかと考えると少し恐ろしい。
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