次郎と俺のハナシ

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2章 水の城にて

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 ジェットコースターから帰ってきた通信相手に、次郎とも来たかったな、といわれたが、俺は一緒に来たことがあるので苦笑いをした。

 俺も次郎もジェットコースターには乗れなかったけどね、というと、不思議そうな顔をされた。

 お前、昔は小さかったんだな、と言われたけれど、次郎は次郎でも水の城の次郎だから、お互い小さかったのだ。

 テーマパークの帰り道に、通信相手が唐突に切り出した。そういえば、なんであいつがゲーム名を次郎にしたか知ってる?と。

 あいつ、金髪に緑目で次郎って感じがあんまりしなかったんだよな、と通信相手は呟いていたが、次郎は次郎だったから、そう言われると難しい。

 なんとなく気になって聞いたらさ、と瞼をゆっくりと閉じてから、伏せ目がちで続きを言った。

 次郎は、ゲームの中でぐらい次郎であろうと思って、とこたえたそう。俺は随分と相手を振り回しているから、と。

 次郎を悩ませていたかもしれない事実に、少なくない衝撃を受けた。

 少し落ち込んだ俺を見て、ローくんが励ますように俺の足を叩いたが、叩くのが面白くなってきたのか太鼓のようにリズムをつけて叩かれるようになった。


***

 通信相手は帰って行ったが、ローくんはそのまま滞在するみたいだ。俺のベットの上をミーナと分け合いながらふて寝している。

 観光した際にローくんは歩き回って汚れていたので、お風呂に入れたが、乾燥するときに洗濯機に入れたのがお気に召さなかったらしい。足にキックされた。

 母に、ローくんはご飯食べる?と聞かれたが、ぬいぐるみだから食べないよ、というと、やっぱり不思議ね、といわれた。

 ローくんを連れて歩いてると、近所の子供たちがやってきてローくんを何処かに連れて行ってしまうが、ローくんは家に歩いて帰ってくる。
 汚れても大丈夫なように、服と靴下を履いてもらうことにした。

 ローくんはどうやら近所の子供たちの親分的な存在になったみたいで、子供たちの1人はレジャーシートを持参している。公園でひいてもらった後、どうぞ、と恭しく言われている姿を見てびっくりした。何があったのだろう。

 一度、ローくんのことで警察官が家に来たことがあった。

 ぬいぐるみがお宅に歩いて帰って行くところをみたとの通報が入ったのですが、と困り顔でいわれた。ぬいぐるみの件で数十件、通報があったそう。

 水の城の観光で観光客に写真を撮られていたが、それがネットでも拡散したらしく、その影響もあったらしい。

 警察官に、一応確認させて頂いてもよろしいでしょうか、といわれ、ローくんを連れてくると、ぬいぐるみですね、と更に困らせたようだった。

 もしよければ、1週間ほど預からせて頂いてもよろしいでしょうか、と申し訳なさそうに提案された。
 通報が多いので、安全かどうかの確認を研究者とともにして、公式に発表することも検討している、と。勿論、傷一つつけない、といわれた。

 ローくんどうする?とローくんに聞くと、首を傾げた後、斜めになりながらもうなづいた。警察官の背後にあるパトカーが気になるようだった。

 警察官は、本当にぬいぐるみが動いてる、と呆気にとられたように呟いていた。

 ローくんはパトカーのなかで元気よく手を振っていってしまった。
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