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1章 終わりと始まり
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しおりを挟む5年も次郎を探してたから気づいたら次郎を探してる。朝起きたらおはようと挨拶するのと同じぐらいな気持ちだった。
だから、次郎が俺を呼ぶ声が聞こえた時、心臓が飛び出たんじゃないかってぐらい驚いた。声が前より高いのに俺を呼ぶ声はそのままだったから。
声が聞こえたのに姿が見えなくて探したら、思ってたよりずっと下の目線にいた。茂みの中から出てきた次郎は、最後にあった時より小さくて顔も声も違っていて、パンダの着ぐるみを着てた。
動物園にいたの、と聞くと呆れた顔をされたけど、やっぱり次郎だと思って嬉しくなった。
次郎、隠れんぼ下手だったね、と言うと、俺が見つけたのに何言ってんの、と舌ったらずな声で言われた。
俺は隠れんぼが嫌いになりかけてたけど、好きになったし、動物園はもっと好きになった。
次郎に見せたいものが沢山ある、と次郎の手をひいて家に帰った。次郎が喜びそうだと集めてた色んな地図とか、一緒に食べたかったお菓子の包装紙とか、コレクションしてる松ぼっくりの話とかは話すことはいっぱいだった。
次郎が、うんうん、とうなづいて笑ってくれるのが嬉しくて、俺はびっくりするぐらい喋って気づいたら寝てた。起きたら次郎が横で寝てて、夢じゃなかったことに驚いた。
母に、次郎が帰ってきた、と言いにいくと、驚いた顔して俺の部屋に行って、この子だれ!?と叫び声が聞こえた。母と次郎を連れて交番に行くと、次郎の今の親が次郎を探していたみたいで大騒ぎになってた。母と謝罪を繰り返した。
***
次郎はまさかの砂の大陸に産まれてて、そもそも水の城にいなかったらしい。
そういえば、髪の色が砂の大陸出身者に多い金髪になってる。染めたと思ってたけど、地毛らしい。
隠れんぼのルール違反では、というと、隠れんぼは最初から宇宙規模だっただろ、と言われた。そうだっけ。
俺の頭じゃ宇宙飛行士になれる気がしないし、ロケットにひっつくか、紐を括り付けて一緒に飛んでいくしかなかったから万事急須だった。
俺のこの方法を次郎に伝えると、シンプルに命がなくなるよ、と言われたから危なかった。
次郎の親が次郎の今の名前を呼んで、ジェスチャーでこっちにくるよう伝えてるから、早く俺も言わなきゃならない。
俺の家で住もうよ、というと、俺、小さいし、家に来たら、と逆に誘われた。俺もその方がいい気がして、次郎の親に、お世話になります、と伝えたら話を聞いていたのか母に怒られた。
けれど、次郎の親は、よかったらおいで、と言ってくれたので、また後々話そうということに纏まった。
別れる前に、次郎の母のことを尋ねられたので、引っ越してリィアと暮らしてるというと、お世話になってます、頭を下げられた。
リィアは貸してるだけだよ、次郎が戻るまで、というと、俺は次郎だけど次郎じゃないよ、と難しいことを言われた。
次郎のことを伝えてもいいか聞くと、首を横に振りながら次郎に断られた。余計な苦しみを与えたくないから、と次郎が言うけれど、俺にはよく分からなかった。
次郎が俺の目を見ながら、ごめん、俺の我儘で苦しませる、と言われたけど、益々意味が分からなかった。
俺が次郎に会えて、こんなに喜んでるのがなぜ分かんないんだろって不思議で仕方なかった。
けれど、なぜかこの言葉は俺の胸のなかに残った。次郎が真剣な顔をしていたからかもしれない。
俺は10歳になっても、無神経なやつで、次郎はもっと子供になったのに反比例するように大人になってたというのに気付くのは数年後のことだ。
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