誠実であることは難しい

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母親について

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「あの子はあなたに相応しくないと思うの。」


まるでドラマみたいな言葉。
またか。
まり子の時もそうだった。
まり子は俺の母親に会ったことがある。恋人としてではなく、友だちとして紹介した。にもかかわらず。

とう子さんのことは、たまたま新宿で二人で歩いているところを見かけたらしかった。


「またご神託か。占いとかか」

「そうじゃないわ。」

「・・・」

「あなたが心配なのよ。電話かけてもいつもでないし。何してるの?」

そう言って、グズグズ泣き出した。


「・・・ふっ、はははっ」

俺はそれを見て、笑った。


心配?お前が?俺を?
俺のこと嫌いだろ?嫌悪感がすごいもんな。
お前が心配してるのは自分の評判だけだ。

「笑いごとじゃないわ!」

「・・・ふっ、ごめん。別に心配するようなことは何もしてないよ」


そう言うと、母親は不満そうながらも廊下へ消えてった。
たまに実家に帰るとこれだ。


彼女の何を知って、相応しい相応しくないとほざくんだ。
とにかくケチをつけたいんだ。理由はなんでもいい。
いい歳になっても、支配したがる。

まり子の時は、あんなに太ってみっともないとか、片親は良くないとか、クソみたいなこと言ってた。
自分より弱そうな人間をみつけては、嬉々として攻撃するお前の方が、みっともないよ。

木屋町のことだって、最初は気に入らないと言ってた。祖父が資産家だと知って手のひら返したが。

自分は高尚な人間と勘違いしているようだが、実際は金と権力におもねっている。


親父の蔵書から目当てのものを見つける。サッサと帰ろう。


とう子さんはお母さんと仲が良いと言っていた。自分と違って、ものすごい美人だと。
「あんたは器量が良くないから、料理を頑張りなさい。」と子どもの頃から言われていたらしい。すごい言いぐさだが「お母さんは誰に対しても口悪いの。」と笑ってた。


とう子さんと結婚したいな。
でも、あんな母親に会わせたくない。
早く死んでくれないかな・・・


「どうしたの、よし君。忘れ物?」
実家に寄って帰ると言ったのに、とう子さんちに戻ってきてしまった。

「ごめん、風呂だった?」
ホカホカに湯気が出てる。歯磨き粉持って、歯ブラシしようとしてたのかな?

「・・・なんか、あったの?」
なんで、わかるかな。

「よし君、コンビニ行く?」
俺が落ちこむと、お菓子を買ってくれる。おばあちゃんか。

「俺、かりかりまんがいい」
「好きだよね~。」

そう言って、歯磨き粉を置いて、財布が入ったポーチを持ってきた。

「サンダルでいっか。」
今では当たり前のように手をつなぐ。


付き合ってもうすぐ1年。記念日はどんな風にしてお祝いしよう。
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