誠実であることは難しい

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デートについて

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「今度、二人でどこかに出かけませんか」

そう塚本さんを誘ったとき、彼女はうつむきながら嬉しそうに「うん」と言った。

俺が塚本さんに好意を抱いていることは会社のみんなはわかっていて、というか、「わかりやすい」「バレバレ」と言われ、最近になってやっと塚本さん自身も意識してくれるようになった。

近寄ると自然に笑顔を返してくれる。見つめあって空気がなごむ。たぶん二人のまわりには見えないハートが飛んでるんじゃないか。

「デートですよ?」
「あ、うん、うん。大丈夫。」

不安になって確認してしまった。
動物園はどうですか?と聞くと、小学校以来行ってないから、行ってみたいと目を輝かせた。


デート当日は上野駅前で待ち合わせた。早めに行って改札から出てくる彼女を待つ。時間ぴったりにあらわれた彼女はスカート・・・ではなくジーンズ。明るい水色の厚手のパーカー。
普段着っぽいけど、量販店のものじゃないブランドものの良いやつだとわかる。


「水色も似合いますね」
「あ、ありがと・・・千川さんと伊藤さんと色違いでお揃いなの。」
「仲良いですよね」
そう言うと、彼女は笑顔になった。


「でもスカート見たかった・・・」
「!ごめん・・・動物園だからいっぱい歩くかなと思って・・・」
眉毛がハの字になってしまった。

「大丈夫。かわいいから、大丈夫」あわてて言い直す。
手をつなぎたいけど、がまんする。
たぶん、塚本さんには、ちゃんと、ちゃんと言葉で『付き合ってください』と言ってからじゃないといけない気がする。


動物園はそこそこ混んでいたが、割とスムーズに廻ることができた。

「えっ?カバ?」
「そう。カバが1番癒やされます」
「上野って言ったらパンダじゃないの?」
「まあまあまあ、見ればわかります」


俺のお気に入りは、カバだ。想像してたよりも、愛らしい。
しかも偶然この日は、カバが厩舎にいて、間近で見ることができた。

「ええっ、すっごいおっきい・・・」
彼女が目を丸くしている。
「あはは!ほんとだ!しかも、なんかかわいいね?」

声を出して笑ってくれた。
よかった。共感してくれた。
なんだか抱きしめたくて、腕がムズムズする。


塚本さんは素直だ。知ったかぶりしないし、目下のものの話もちゃんと聞いてくれる。
大人の余裕みたいなものも感じるが、やっぱり年齢の割には幼い気もする。
それは、なんでも新鮮に感じて喜んでくれるから。


時々、彼女の若い頃に同情してるだけなんじゃないかとも思う。

俺みたいに嘘つきじゃないから、損して生きていた。

これは恋じゃないんだろうか。

でも一緒にいたいし、さわりたい。
さわられて喜ぶ彼女がみたい。
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