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バカなことについて

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純と別れてしばらくたったころ、ニッシーと寝た。
一人になると悪癖がでてしまう。バカだったなあと後悔していることの一つだ。


たまたま偶然、ニッシーも長いこと付き合っていた本命と別れて、すごくへこんでいた時だった。

「泊まりでいい?」
と聞かれて
「いいよ」
と答えた。

そもそも、するつもりで俺を呼び出したのだろう。

ニッシーとのセックスは案の定、無味乾燥なものだった。感じてるフリだけの薄ら寒いセックス。


ニッシーが本命と住んでいたマンション。そこかしこに残る、二人の思い出の残骸。

「まだ連絡は普通にとってるんだ。たまに部屋の掃除に来てくれたりとかして。」
そう言ったニッシーの目は虚ろだった。

気にかけてもらえるけど、戻ってきてくれないことはわかる。そう、こぼした。

そうやって、落ち込んでいるかと思えば
「慰めてくれる奴はたくさんいるんだけどね~。アンタで3人目。」とヘラヘラ笑いだす。

ダブルベッドで二人でごろごろしながら、ニッシーは言った。
「アンタといるのラクでいいよ。気を使わないですむ。」
誰と比べてるのか?
「恋愛感情じゃないからな」

「それもそうだけど、なんでも受け入れてくれるじゃん。こっちに要求もしてこないし。」
「恋愛感情がないってことじゃなくて?」
「うまく説明できないなあ。以前は恋愛でも仕事でも嫉妬されることで、なんか興奮したしモチベーションが上がったのよ・・・」
「・・・」
「でも今は、恋愛も仕事も信頼関係が大事だって身にしみた・・・」


俺とやってちゃ意味ないんじゃねえ?相変わらず食い散らかすクセも治ってない。
それでも、いつも茶化すニッシーが、初めて本音をさらけだしたように見えた。


その後、ニッシーとの連絡は途絶えた。
まあ元気にやってんだろ、くらいに思っていたが、ある日突然ニッシーの元彼から俺に電話がかかってきた。
話の要領は得なかったが、すごく怒っている。「散々つらい思いをした」とか「ひどい」とかごちゃごちゃ言われたが、俺がニッシーと寝たのは別れたあとだ。
一方的にまくし立てられているだけだったが、話を聞いているうちに、なんだか申し訳なくなってきた。
あの部屋を見れば、ちゃんと別れていないことはわかっていたはずだ。かわいそうなことをしてしまった。
しかも俺とニッシーが付き合うもんだと思っている。まあ、余計なことは言わず、俺が嫌われ者になればいいかと。
「彼は俺といても、あんたの話ばかりだった。やり直せば?」と言ったが、「元に戻る気は無い!」と怒って電話を切られた。

今でも忘れられない、仕事帰りの池袋の路上で携帯にかかってきた電話。番号はニッシーの番号だった。

二人は『別れている最中』なのだろう。惑っている。簡単なことではなかった。


「嫉妬深い」とニッシーは嬉しそうにしてた。愛情深くて良い男なのだと。なのに浮気がやめられない。


俺は本命だった彼が早くニッシーを捨てて、別の男をつかまえて幸せになればいいと、思った。大きなお世話だろうけれど。 
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