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膝枕について
しおりを挟む以前、塚本さんから友達の話を聞いたことがある。
商業高校で派手な女子が多いなか、地味な女子二人で固まっていたと。
その時の唯一の友達も、働きはじめてから年に1回くらいしか会わなくなったと言っていた。
あまり、笑わない彼女。
「私の笑顔って、恐くない?」
と言った時は、びっくりした。
そう誰かに言われたのか。怒り気味に問いかけると、彼女は困った顔をしていた。
「そんなわけない。笑った方がぜったい可愛い」
俺は何度も言い続けた。
この旅行の後、ぶどう狩りの写真を彼女に渡したときに「私ってこんな風に笑うんだ・・・」とつぶやいていたから「いつもこんなですよ」と言うと、ホッとした顔をしていた。
それを見て、またもどかしい気持ちになってしまったのだけど。
涙ぐむ塚本さんを見て、伊藤さんと千川さんがもらい泣きしている。
「俺の知ってる女の子グループってギスギスした感じなんすけど、うちの子たちはみんなええ子や・・・」と早瀬君が感動していた。
そのあと、ファミリーは早々に部屋に引き上げ、飲んべえで部屋飲みしようとなって、なにがどうしてこうなったのか。
気づいたら俺は塚本さんの膝枕で、仰向けで眠っていた。
顔を触られて、くすぐったくて起きてしまった。
塚本さんはもちろん、早瀬君や千川さんも俺の顔をのぞき込んでいる。
「「「あ、起きちゃった。」」」
一瞬で覚醒した。
「えっ、えっ?」
千川さんは口紅をもっている。
早瀬君はなぜかセーラー服を着て、顔もラクガキされていた。
ってことは俺もか。
ひでえ、って気持ちと恥ずかしさで顔を覆う。ってか、なんで膝枕?
「まって!まって!写真撮らせて!」
千川さんは酔っぱらってる。
指の間から塚本さんを見るとニコニコしていた。
まあ~、いっか・・・。
おてもやんみたいにされた俺は、早瀬君と並んで変顔をきめて写真を撮らされた。
そして千川さんたちはヒーヒー笑いながら次のターゲットへ、忍び寄っていった。
「疲れてたんだね。」
塚本さんがお手拭きで、俺の顔を拭いてくれる。
「足痛くなかったですか?」
「大丈夫。数分だから。前原君がうつらうつらしてたから、寝ぼけてるんだなって。あたりまえのように膝に頭乗せてきて、みんなで笑っちゃったよ。気づかなかったね。」
俺自身がやらかしてた。
「すみません、気づきませんでした・・・」
拭きおわるまで目をつむる。このままずっと顔に触っててほしい。
「終わったよ。」
と言われたが、俺は
「また膝枕してほしい」と甘えてみた。
塚本さんはびっくりした顔をして
「もう!おしまい!」と笑いながら俺をたたいた。
「なになに?カップル誕生?」と伊藤さんがニヤニヤと揶揄う。
俺はニッと笑って、サムズアップで返事をしといた。
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