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新しい恋について
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しんちゃんに会ったことは、純には言わなかった。
そもそも最近、あまり話すことがない。電話でも近況報告だけで、お互い気持ちがすれ違っていることは、わかっていた。
きっと純は間違いに気づいて、彼氏のもとに戻るのだろう。ニッシーが最後に本命だけを選んだように。
二股をする純のせいにも思っていたが、長い間、彼に重荷を背負わせて、それを俺はただみているだけだった。
別れよう。誰かを騙すのはやめよう。
もし次に純に会うことがあるなら、そうしようと決めた。
「よしくん。」
客先から会社に戻ろうとしてた時だった。
なつかしい呼び方。周りを見わたすと、オープン前の店の脇で、しんちゃんがヒラヒラと手を振っていた。
「しんちゃん」
俺は駆けよった。
「今日、ばったり会えないかなあって思ってたの。」
「俺のこと気づいてたんだ」
「あったりまえじゃない。こんなカッコイイ子、忘れないわよ。」
しんちゃんがポンと俺の腕を叩いて、俺は苦笑いした。
「もう長いこと会ってなかったわよね。」
「うん。お店も変わっちゃったし。俺、彼氏ができたから夜遊びほとんどしてなかった」
「あら、恋人ができたの?よかったじゃない。おめでとう。」
おめでとう・・・おめでとうと喜んでもらえるような付き合いじゃない。
俺は口ごもってしまった。
俺のそんな様子をみて、しんちゃんは何か察したのだろうか。
「恋愛って楽しいばかりじゃなくて、いろいろ難しいわよね。」
しんちゃんはそう言った。
「しんちゃんは今日は仕事?」
「そうよー打ち合わせ。ついでにお偉いさんたちと会食。」
「そうか・・・」
「あのね、ここ最近は三丁目のバーにいるの。ここ。」
ショップカードを渡された。
「ここ、ゲイバーじゃなくて普通の静かなバーなの。お友達と騒がれるのは困るけど、デートにはいいわよ。」
俺が頷くと「またね。」と言って、しんちゃんは行ってしまった。お守りのように財布にショップカードをしまう。少しだけ気持ちがラクになった。
会社に戻ると、慌ただしい業務がはじまる。今週も終電で帰れないくらい忙しい。
夜中に突然「うあー!!」と伊藤さんが叫びだし「私、ホテルに泊まる!」と言い出した。
えっ、私も私も、と女性陣たちが集まりだした。
どうせ家に帰れないならシャワーだけでも浴びたい。もう眠い。
明日のイベントを乗り越えても次の仕事がつまっていた。
そして、俺たちは給料をもらっているが、休みが無く、金を持っていた。
4時までバタバタと働き「では4時間後に。」と言って女性陣たちが次々と退社する。
俺たちもそろそろ寝るか~、と段ボールを敷きはじめた。
「前原君のメガネも見慣れたね。」
帰り支度をしながら塚本さんが言った。
「もう10時にコンタクト外しました。塚本さんもホテルですか?」
「うん。」
なんだか離れがたかった。甘えたような口ぶりになったかもしれない。
「塚本さん、おやすみなさい」
笑った顔が見たかった。
「うん、おやすみ。」
そう言って彼女は笑ってくれた。
そもそも最近、あまり話すことがない。電話でも近況報告だけで、お互い気持ちがすれ違っていることは、わかっていた。
きっと純は間違いに気づいて、彼氏のもとに戻るのだろう。ニッシーが最後に本命だけを選んだように。
二股をする純のせいにも思っていたが、長い間、彼に重荷を背負わせて、それを俺はただみているだけだった。
別れよう。誰かを騙すのはやめよう。
もし次に純に会うことがあるなら、そうしようと決めた。
「よしくん。」
客先から会社に戻ろうとしてた時だった。
なつかしい呼び方。周りを見わたすと、オープン前の店の脇で、しんちゃんがヒラヒラと手を振っていた。
「しんちゃん」
俺は駆けよった。
「今日、ばったり会えないかなあって思ってたの。」
「俺のこと気づいてたんだ」
「あったりまえじゃない。こんなカッコイイ子、忘れないわよ。」
しんちゃんがポンと俺の腕を叩いて、俺は苦笑いした。
「もう長いこと会ってなかったわよね。」
「うん。お店も変わっちゃったし。俺、彼氏ができたから夜遊びほとんどしてなかった」
「あら、恋人ができたの?よかったじゃない。おめでとう。」
おめでとう・・・おめでとうと喜んでもらえるような付き合いじゃない。
俺は口ごもってしまった。
俺のそんな様子をみて、しんちゃんは何か察したのだろうか。
「恋愛って楽しいばかりじゃなくて、いろいろ難しいわよね。」
しんちゃんはそう言った。
「しんちゃんは今日は仕事?」
「そうよー打ち合わせ。ついでにお偉いさんたちと会食。」
「そうか・・・」
「あのね、ここ最近は三丁目のバーにいるの。ここ。」
ショップカードを渡された。
「ここ、ゲイバーじゃなくて普通の静かなバーなの。お友達と騒がれるのは困るけど、デートにはいいわよ。」
俺が頷くと「またね。」と言って、しんちゃんは行ってしまった。お守りのように財布にショップカードをしまう。少しだけ気持ちがラクになった。
会社に戻ると、慌ただしい業務がはじまる。今週も終電で帰れないくらい忙しい。
夜中に突然「うあー!!」と伊藤さんが叫びだし「私、ホテルに泊まる!」と言い出した。
えっ、私も私も、と女性陣たちが集まりだした。
どうせ家に帰れないならシャワーだけでも浴びたい。もう眠い。
明日のイベントを乗り越えても次の仕事がつまっていた。
そして、俺たちは給料をもらっているが、休みが無く、金を持っていた。
4時までバタバタと働き「では4時間後に。」と言って女性陣たちが次々と退社する。
俺たちもそろそろ寝るか~、と段ボールを敷きはじめた。
「前原君のメガネも見慣れたね。」
帰り支度をしながら塚本さんが言った。
「もう10時にコンタクト外しました。塚本さんもホテルですか?」
「うん。」
なんだか離れがたかった。甘えたような口ぶりになったかもしれない。
「塚本さん、おやすみなさい」
笑った顔が見たかった。
「うん、おやすみ。」
そう言って彼女は笑ってくれた。
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