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休日について 2
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買い物に付き合ってくれたお礼にと、塚本さんがお茶をごちそうしてくれた。
「なんか、ご満悦だね?」
塚本さんが言う。
そりゃそうだ。俺がコーディネートした服を着て、塚本さんはいつもより可愛く仕上がった。
「女の子と洋服買いに行くのって楽しいですよね」
俺がニコニコしながら言うと
「そんなこと言うの前原君ぐらいだよ・・・」
と塚本さんは苦笑いした。
「なんか前原君のイメージ変わったなあ。」
塚本さんがしみじみと言った。
「そうですか?」
「うん。もっと取っつきにくいと思ってた。」
いや、そりゃあなたでしょ、と心の中でツッコミを入れる。
「洋服も、こういうの選ぶとは思わなかった・・・」
この頃の俺は派手な柄シャツやロックTシャツばかり着ていた。髪はチリチリ、左耳たぶに二つ、右耳軟骨に二つのボディピアス、見せてはいないがヘソも。
塚本さんに選んだ服は、無地の優しい色合いばかりだ。
「俺、昔、黒縁メガネの優等生スタイルでしたよ」
「ええっ!」
「髪もちゃんと黒くて」
今日一日で、塚本さんにだいぶ気を許してもらえたような気がする。いつも人と距離をおいている感じがするが、話すと普通に返してくれる。
彼女の愛想がないことを上司は気にしていた。
笑顔をもっと引きだせないかと、好きな音楽や、趣味の話をしたが、ここで俺たちはまったく好みが合わないことが判明した。
俺は洋楽、塚本さんは邦楽。俺は読書や映画が好きだが、塚本さんはカラオケとお菓子作り。
「わからないなあ。」
「わかんないっすね」
お互い何度この言葉を言い合っただろう。だけど楽しかった。
彼女は聞き上手で、結局この日は、俺が好きなフランス映画のヴァンパイアが出てくる話を熱く語って終わってしまった。
それでも、この日からのような気がする。
塚本さんが社内の人と笑顔で話しているのを、よく見かけるようになった。
俺のおかげじゃね?
密かに思った。塚本さんは最近、他部署の人からもよく食事に誘われている。
「俺、はじめて塚本さんとしゃべりました。笑ってバカじゃないの、って言われて。塚本さんの笑顔見ると、すごい達成感ありますね!」
早瀬君が興奮気味に報告してきた。
「わかる」
俺は同意した。いつも、ちょっと不機嫌そうに見える。でも彼女はただ緊張してただけなのかもしれない。
「えー、私たちにはいつも笑顔でしゃべってくれるよ?」
千川さんが言った。
「えっ、そうなんだ。なんか、悔しいっす。」
早瀬君が口を尖らせて言う。
「塚本さんね、歌がすっごい上手いんだよ。ドリカムとか、本物そっくり。この間、女子だけでカラオケ行って・・・」
「へー、意外っすね!」
塚本さんの話を、俺はまるで保護者になったような気分で、うんうん頷いて聞いていた。
「なんか、ご満悦だね?」
塚本さんが言う。
そりゃそうだ。俺がコーディネートした服を着て、塚本さんはいつもより可愛く仕上がった。
「女の子と洋服買いに行くのって楽しいですよね」
俺がニコニコしながら言うと
「そんなこと言うの前原君ぐらいだよ・・・」
と塚本さんは苦笑いした。
「なんか前原君のイメージ変わったなあ。」
塚本さんがしみじみと言った。
「そうですか?」
「うん。もっと取っつきにくいと思ってた。」
いや、そりゃあなたでしょ、と心の中でツッコミを入れる。
「洋服も、こういうの選ぶとは思わなかった・・・」
この頃の俺は派手な柄シャツやロックTシャツばかり着ていた。髪はチリチリ、左耳たぶに二つ、右耳軟骨に二つのボディピアス、見せてはいないがヘソも。
塚本さんに選んだ服は、無地の優しい色合いばかりだ。
「俺、昔、黒縁メガネの優等生スタイルでしたよ」
「ええっ!」
「髪もちゃんと黒くて」
今日一日で、塚本さんにだいぶ気を許してもらえたような気がする。いつも人と距離をおいている感じがするが、話すと普通に返してくれる。
彼女の愛想がないことを上司は気にしていた。
笑顔をもっと引きだせないかと、好きな音楽や、趣味の話をしたが、ここで俺たちはまったく好みが合わないことが判明した。
俺は洋楽、塚本さんは邦楽。俺は読書や映画が好きだが、塚本さんはカラオケとお菓子作り。
「わからないなあ。」
「わかんないっすね」
お互い何度この言葉を言い合っただろう。だけど楽しかった。
彼女は聞き上手で、結局この日は、俺が好きなフランス映画のヴァンパイアが出てくる話を熱く語って終わってしまった。
それでも、この日からのような気がする。
塚本さんが社内の人と笑顔で話しているのを、よく見かけるようになった。
俺のおかげじゃね?
密かに思った。塚本さんは最近、他部署の人からもよく食事に誘われている。
「俺、はじめて塚本さんとしゃべりました。笑ってバカじゃないの、って言われて。塚本さんの笑顔見ると、すごい達成感ありますね!」
早瀬君が興奮気味に報告してきた。
「わかる」
俺は同意した。いつも、ちょっと不機嫌そうに見える。でも彼女はただ緊張してただけなのかもしれない。
「えー、私たちにはいつも笑顔でしゃべってくれるよ?」
千川さんが言った。
「えっ、そうなんだ。なんか、悔しいっす。」
早瀬君が口を尖らせて言う。
「塚本さんね、歌がすっごい上手いんだよ。ドリカムとか、本物そっくり。この間、女子だけでカラオケ行って・・・」
「へー、意外っすね!」
塚本さんの話を、俺はまるで保護者になったような気分で、うんうん頷いて聞いていた。
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