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いつも通りについて
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「借りた本、すごくすごく良かった。」
純が言った。
「推理小説だけど、しっかり歴史物で。ただ僕はキリスト教の歴史をあまり知らないから、理解できてない部分がいっぱいあったけど、それでも面白かった。」
「登場人物の名前も難しいから、こんがらがっちゃうしな」
「確かに。でもするする読めたよ。映画も観たくなった。」
「俺、映画を先に観たんだよ。セットの装飾とか音楽とか荘厳で・・・」
いつも通り。純といつも通りの会話をして、楽しく食事できた。
食事代は俺が連れてきたくて勝手に予約したからと、ぜんぶ俺が払った。
「新宿に行こう!新宿の飲み代は僕がだすから!」
純が言った。俺は酒が飲めないけどな、と笑ったら、そうだった!と純があわてた。
たぶん純は、気兼ねなくしゃべれるから新宿を選んだんだろう。だけど、それは失敗だったとすぐに気づく。
通りで連れ立ち、お店でいちゃつくカップル。色っぽい雰囲気が漂っている。
純が大人しくなってしまった。
「あのさ」
「・・・うん。」
「もう困らせたりしないから、大丈夫だよ」
「・・・うん。」
純がこっちを見てくれない。
「僕、付き合ってる人のことがすごく大事で・・・。」
「わかってる」
「別れるつもりもないし。その、ごめん。」
「謝らなくていいよ」
「・・・うん。」
「でも、できればこれからも会ってほしい。二人きりじゃなくていいから。大勢とかでさ」
「・・・うん。」
よし、確約とれた。
純がこっちを見る。ホッと安心したような顔。露骨だなあ、とちょっとガッカリしてる俺を見て笑った。
その時、まったく予測もしてなかったことを純がした。俺のほっぺたをギュッとつねったのだ。びっくりしている俺を見て、また笑う。
どんな、俺はどんな顔をしていたのだろう。触ってもらえた喜び?物欲しそうな顔?
くっつかない程度に、俺は顔を寄せた。
「痛い」
「ごめんね。」
純が笑いながら俺の頬をなでる。
ずっと待て、をしていた。
じっとじっと見つめていた。好きだよ、って気持ちを込めて。二人の空気が変わる。
そばにあった純の手をにぎる。振りはらわれない。
純は戸惑っていたが、最後、意を決したかのように「ああ、もう・・・」と言って俺にキスをした。
待ち望んでいたものを与えられて、一生懸命かぶりつく。純も応えてくれている。俺たちは長いこと手をつないだままキスをしていた。
隅のテーブル席の暗がりに拍車がかかって、やめられない。ずっとしていたい。
「ねえー、あそこ、キスしてる。ほら。」そんな声が遠くの席から聞こえる。
それでも、なかなか離れられなかった。誰に見られてもいい。
この日から三年間、俺は純の「二番目の彼氏」になった。
純が言った。
「推理小説だけど、しっかり歴史物で。ただ僕はキリスト教の歴史をあまり知らないから、理解できてない部分がいっぱいあったけど、それでも面白かった。」
「登場人物の名前も難しいから、こんがらがっちゃうしな」
「確かに。でもするする読めたよ。映画も観たくなった。」
「俺、映画を先に観たんだよ。セットの装飾とか音楽とか荘厳で・・・」
いつも通り。純といつも通りの会話をして、楽しく食事できた。
食事代は俺が連れてきたくて勝手に予約したからと、ぜんぶ俺が払った。
「新宿に行こう!新宿の飲み代は僕がだすから!」
純が言った。俺は酒が飲めないけどな、と笑ったら、そうだった!と純があわてた。
たぶん純は、気兼ねなくしゃべれるから新宿を選んだんだろう。だけど、それは失敗だったとすぐに気づく。
通りで連れ立ち、お店でいちゃつくカップル。色っぽい雰囲気が漂っている。
純が大人しくなってしまった。
「あのさ」
「・・・うん。」
「もう困らせたりしないから、大丈夫だよ」
「・・・うん。」
純がこっちを見てくれない。
「僕、付き合ってる人のことがすごく大事で・・・。」
「わかってる」
「別れるつもりもないし。その、ごめん。」
「謝らなくていいよ」
「・・・うん。」
「でも、できればこれからも会ってほしい。二人きりじゃなくていいから。大勢とかでさ」
「・・・うん。」
よし、確約とれた。
純がこっちを見る。ホッと安心したような顔。露骨だなあ、とちょっとガッカリしてる俺を見て笑った。
その時、まったく予測もしてなかったことを純がした。俺のほっぺたをギュッとつねったのだ。びっくりしている俺を見て、また笑う。
どんな、俺はどんな顔をしていたのだろう。触ってもらえた喜び?物欲しそうな顔?
くっつかない程度に、俺は顔を寄せた。
「痛い」
「ごめんね。」
純が笑いながら俺の頬をなでる。
ずっと待て、をしていた。
じっとじっと見つめていた。好きだよ、って気持ちを込めて。二人の空気が変わる。
そばにあった純の手をにぎる。振りはらわれない。
純は戸惑っていたが、最後、意を決したかのように「ああ、もう・・・」と言って俺にキスをした。
待ち望んでいたものを与えられて、一生懸命かぶりつく。純も応えてくれている。俺たちは長いこと手をつないだままキスをしていた。
隅のテーブル席の暗がりに拍車がかかって、やめられない。ずっとしていたい。
「ねえー、あそこ、キスしてる。ほら。」そんな声が遠くの席から聞こえる。
それでも、なかなか離れられなかった。誰に見られてもいい。
この日から三年間、俺は純の「二番目の彼氏」になった。
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