誠実であることは難しい

びっとのびっと

文字の大きさ
上 下
23 / 50

失恋について

しおりを挟む
「えっ?なんなの?もしかして本当に三角関係がはじまるの?」と、ニッシーが問いつめる。

純がこっちを見てわなわなしている。

「純には彼氏がいるから迫らないし、三角関係にはならないだろう」
「でも、でも、そういう意味で純が好きってことだよね?」


このタイミングでか。うっかり口がすべってしまった。彼氏と別れてくれたら、とか、俺のこと好きだって確信できてから、とか、時期を狙っていたら1年たってしまったんだけど。


「俺が好きって言ったら、もう会ってくれないのか」そう純に聞いた。


ニッシーが息をのんでいる。


「・・・僕、あ、あ、・・・」
純が動揺しまくっている。

「・・・僕、会えないよ・・・」


ニッシーの顔が、ガガーンとしている。


あの、僕、帰るね。と消えるような声で、ささっと純は逃げていってしまった。

去っていく純の後ろ姿を見て、次に青ざめているニッシーを見て、最後に俺は机につっぷした。
ふられたか・・・。俺、明日からどうやって生きていこう・・・。


「あの・・・ごめんね?」
「・・・」
「か、勘違いしてて!純の彼も悪い人ではないんだけど、なんだかなー、って思ってたの。こっちの方がいい雰囲気だし、背中を押せばうまくいくかな~、って・・・」
「・・・」
「うわーん、ごめんって!」
「うるさい」


頭を上げると、ニッシーが涙目になっている。泣きたいのは俺の方だ。


「いいよ。勘違いしてたのは俺の方だ。毎週会ってくれてたし、俺のこと好きかも、って」
「アタシも話聞いてて、お似合いじゃん、って思ってた。」
「・・・1回さ、イベントで盛り上がって、純がすごく機嫌よく酔っぱらったときがあって」
「うん?」
「手をにぎったら、振りはらわれなかったんだよ」
「あら。」
「だからさ・・・」
あ、やべ、泣けてきた。

「飲もっか!あ、アンタお酒飲めないか・・・」

しかし、その日は飲んだ。酔ってみたかった。すぐ具合が悪くなっただけだったが。
ニッシーの彼氏が車で迎えにきて、はじめて会った。想像とは全然違う、優しそうな年下の男の子。

俺はニッシーの彼氏が来ても、まだぐじぐじ言ってた。
「純はさ、すごく真面目じゃん・・・」
「そうね。」
「人情ものの映画とか小説が好きでさ、らしいなって」
「そうよね。」

今までずっと純にたいして抱いていた気持ちを、ニッシーとニッシーの彼氏に滔々と語った。

「俺、ほんとはムチムチした子が好みなんだよ」
「ふうん?」
「でも、そういうのも、どうでもよくてさ・・・」
「ほお。」
「レンタルビデオ店って聞いてさ、エプロン付けて働いている姿を想像して」
「・・・」
「ああ~、エプロンいいな~って」
「ねえ!もう!こんな子だったの?もっとクールでドライだと思ってたのに!」


まあまあ、とニッシーの彼氏がなだめている。いつも、こういう話を聞いてくれるのは、まり子だった。俺が臆病者なのも、よくわかってた。
まり子はサンディエゴに行ってしまって、もういない。最後、ギクシャクして快く送り出せなかった。

「俺あんなに優しくしてもらったのに、慰めの言葉ひとつかけられない、ダメなやつなんだよ・・・」

「えっ?もう!なんの話よ~!?酔ってんの?」


その日、俺は吐いた。
やっぱり失恋は胃によくない。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マッサージ物語

浅野浩二
現代文学
マッサージ物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中の人

阿蘇武能
現代文学
ヒーローショーのアルバイトをする青年の話。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

令和の中学生がファミコンやってみた

矢木羽研
青春
令和5年度の新中学生男子が、ファミコン好きの同級生女子と中古屋で遭遇。レトロゲーム×(ボーイミーツガール + 友情 + 家族愛) 。懐かしくも新鮮なゲーム体験をあなたに。ファミコン世代もそうでない世代も楽しめる、みずみずしく優しい青春物語です!  第一部・完! 今後の展開にご期待ください。カクヨムにも同時掲載。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...