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恋人について
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なんだか毎週、純に会っているような気がする。多いときは週二。
彼氏は大丈夫なのか、と聞いたら「土日は休めないし、いつも忙しいから。」と言っていた。美容師らしい。
そうこうしてるうちに月日がたち、俺も大学を卒業して就職した。舞台装置を作っている会社だ。三人だけの輸入担当だったが、工場から依頼された部品を海外に注文するだけで手続きも手順書に従ってのものなので、そんなに大変ではなかった。まあ外人は納期を守らないのが面倒だが。
「仕事はどう?」久しぶりに会ったニッシーは、変わらず元気そうだった。
「事務仕事は俺に合う気がする。課長と先輩はすごく優しい」と言うと、よかったねえと喜んでくれた。
ニッシーに彼氏とはどうなんだ、と聞いたら「本命以外ぜんぶ切れた。」と言う。
「バレたのか?」
「一人だけ。はじめて簀巻き?ってやつ?毛布の上からビニール紐でぐるぐる巻きにされてさ・・・。このまま殺されるんだ、ってすっごく怖くて少しちびっちゃったわ~。」
「生還できてよかったな」俺は笑った。純はのけ反って笑い続けている。
「ずーっと謝って、やっと紐解いてもらってさ、なんか腹立ってきたから『このまま死んじゃったらどうすんのよ!』って怒ったら、冷たく『死ねばよかったのに』て言われちゃって・・・」
「大変だったんだ。」
「危険を感じたから、バレる前に他の二人とも別れたの。だからあいつは浮気相手は一人、って思ってる。」
そう言ってニッシーはウシシッと笑った。
「出張も多いし家賃もったいないから、一緒に暮らそうかって話しててさ。」
「「えっ」」
「付き合い長いし、安心するしね。」
ニッシーは言い訳っぽく言っていたが、幸せそうに見えた。
「いいなあ。うらやましいよ」ほんと、素直にうらやましかった。
純は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔になって「おめでとう。」と言った。
「二人はさ、付き合わないの?」
ニッシーの言葉に、純がぶっと吹き出した。
「いやいやいやいや、何言ってんの?!」と顔を真っ赤にしている。
「何回いやいや言ってんの・・・。だって、仲良いじゃない。電話でも毎回『二人でここ行ったんだあ。あそこ行ったんだあ。』って報告してくるしさ。」
純は俺を見ながら「・・・僕は・・・いるからさ・・・」と消えそうな声で言った。
「えっ、二人はまだヤッてないの?」とニッシーが笑っている。
「ばっ!アンタとは違うの!」と、純は言った。
「まあ、でも、純に彼氏がいなかったら、付き合えてたのかな?とは思ってる」
と俺が言うと、ニッシーと純はギギギッとこっちを向いて凝視した。
彼氏は大丈夫なのか、と聞いたら「土日は休めないし、いつも忙しいから。」と言っていた。美容師らしい。
そうこうしてるうちに月日がたち、俺も大学を卒業して就職した。舞台装置を作っている会社だ。三人だけの輸入担当だったが、工場から依頼された部品を海外に注文するだけで手続きも手順書に従ってのものなので、そんなに大変ではなかった。まあ外人は納期を守らないのが面倒だが。
「仕事はどう?」久しぶりに会ったニッシーは、変わらず元気そうだった。
「事務仕事は俺に合う気がする。課長と先輩はすごく優しい」と言うと、よかったねえと喜んでくれた。
ニッシーに彼氏とはどうなんだ、と聞いたら「本命以外ぜんぶ切れた。」と言う。
「バレたのか?」
「一人だけ。はじめて簀巻き?ってやつ?毛布の上からビニール紐でぐるぐる巻きにされてさ・・・。このまま殺されるんだ、ってすっごく怖くて少しちびっちゃったわ~。」
「生還できてよかったな」俺は笑った。純はのけ反って笑い続けている。
「ずーっと謝って、やっと紐解いてもらってさ、なんか腹立ってきたから『このまま死んじゃったらどうすんのよ!』って怒ったら、冷たく『死ねばよかったのに』て言われちゃって・・・」
「大変だったんだ。」
「危険を感じたから、バレる前に他の二人とも別れたの。だからあいつは浮気相手は一人、って思ってる。」
そう言ってニッシーはウシシッと笑った。
「出張も多いし家賃もったいないから、一緒に暮らそうかって話しててさ。」
「「えっ」」
「付き合い長いし、安心するしね。」
ニッシーは言い訳っぽく言っていたが、幸せそうに見えた。
「いいなあ。うらやましいよ」ほんと、素直にうらやましかった。
純は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔になって「おめでとう。」と言った。
「二人はさ、付き合わないの?」
ニッシーの言葉に、純がぶっと吹き出した。
「いやいやいやいや、何言ってんの?!」と顔を真っ赤にしている。
「何回いやいや言ってんの・・・。だって、仲良いじゃない。電話でも毎回『二人でここ行ったんだあ。あそこ行ったんだあ。』って報告してくるしさ。」
純は俺を見ながら「・・・僕は・・・いるからさ・・・」と消えそうな声で言った。
「えっ、二人はまだヤッてないの?」とニッシーが笑っている。
「ばっ!アンタとは違うの!」と、純は言った。
「まあ、でも、純に彼氏がいなかったら、付き合えてたのかな?とは思ってる」
と俺が言うと、ニッシーと純はギギギッとこっちを向いて凝視した。
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