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ケイトについて 7

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俺の青ざめた顔をみて、その男は言った。
「まあ、俺はどっちでもいいけど・・・するか?」


「しない」俺は即答した。


男はふうんと相づちをうちながら、おもむろに座ってタバコに火をつけた。
閉じられた部屋のなかからは「いやだ、やめて・・・」と、どっちの女のだかわからない声が聞こえる。
俺と男は一瞬だけ部屋の扉をみて、あとは無視した。

「吸うか?」と差し出されたが首を振る。

「あの女は俺に借金があるんだよ。お前とセックスしていいから、それでチャラにしてほしいって。」呆れた感じでそう言った。
つまり、俺は売られたらしい。彼女の借金のカタに。


「クソだよな。」
男は言った。

「ガールフレンドはそれで構わないのか」と俺が聞くと
「彼女はもともと大勢で遊ぶのが好きだからさ・・・」と悪びれずに言う。

「まあ、だからって俺は無理矢理は好きじゃない。」男は軽くため息をついた。

途方にくれてる俺をチラッと見てから「お前のこと知ってるよ。」と男は言い出した。

なんのことだと先を促すと
「ケイトの唯一まともなボーイフレンド。俺が興味持ってたのを、あの女はわかってたんだろうな。」最後の方はつぶやきだった。
そしてタバコの火を消して言った。


「もう帰れ。二度と来るな。お前はこっち側の人間じゃない。」


静かな声だった。俺は男を見た。まっすぐに俺を見ている。


「俺はお前からじゃなく、あの女から回収する。」
男はそう言った。


俺はうなずいた。そうして部屋をあとにした。


真昼の太陽の光で水面がキラキラしている。それを横目に河川敷を足早にまっすぐ駅の方へ。

何も感じなかった。悲しいとか、怒りとか。ただ終わったと、この河川敷を歩くことはもうないだろうと。


三日後、ケイトから電話があった。ろれつが回らないしゃべり方で
「どうして帰っちゃったの。フレドと寝た?」と言われた。

「寝てない。彼は紳士だった。お前とは二度と会わない。もう電話をかけてくるな」
畳みかけるように告げ、返事も聞かずに電話を切った。直後にコール音が数回あったが出ることはせず、それきり静かに終わった。


まり子には詳細を話さなかった。ただ別れた、俺には無理だったとだけ言った。
「実は私、お金を貸してほしいって言われたんだよね。」と、まり子が言った。驚きはしなかった。
「貸したのか」
「うん、少しだけ。返ってこなくてもいいや、くらいの金額。」
「俺も。俺も同じ」
はぁ~、っと二人でため息をついた。


「クスリやってたって、知ってた?」まり子が聞いてきた。
「なんとなく。あいつ俺にはひた隠しにしてた」そう、クラブで親衛隊まで使って。

まり子は言った。
「好きだったのかな。」


普通、惚れた男を借金のカタに売るか?
どうでもいい。そう思った。 
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