15 / 50
ケイトについて 3
しおりを挟む
クリスとまり子は音楽の趣味も合った。二人ともラップ好きだ。クリスがラップのものまねイントロクイズをやり出して「え~!すごい!」「あ、それ知ってる!」と盛り上がっている。
それをぼんやりとケイトが見ていたから「ラップは聴かない?」と聞いてみた。
「わたしはレゲエの方が好き。マキシ・プリーストとか。」
「ああ、すごくいいよね」
「ワイルド・ワールドが流れると泣いちゃう。」
そう言って笑ったケイトは、いつもより少しリラックスしている感じだった。
ハイテンションでラップからメタルまで繰り広げていたクリスは、酔っ払って早々にダウンしてしまった。
まり子も「おもろいよ~。」と言ってテーブルに突っ伏している。
ケイトもウトウトしていた。こんな時、酒が飲めない自分は半分損している気がする。
「ケイト~、上のロフトベッドで寝ていいよ~。」と、まり子が言った。俺たちは下で雑魚寝だ。
だが、ケイトはすでにクッションにもたれて目を閉じていた。
俺は予備の布団を下に敷く。
「まり子、上で寝な。明日は休みか?」
「ううっ、遅番~。」
「早く寝ろ」
まり子がハシゴを上っていくと、クリスがムクッと起きてのろのろとついていった。
まさかヤルのか?と思ったが、しばらくするとどちらのだかわからないイビキが聞こえてきた。やれやれ、二人は似合いかも。
敷いた布団にケイトを寝かす。
俺も始発まで少し寝ようかと考えながら、換気扇をまわしてタバコに火をつけた。
春先だからまだ寒い。どっかにもう一枚かけ布団ないかと、あたりを見回していたら、ケイトと目が合った。
無言でずっと俺をみつめている。タバコを吸い終えてもずっと。俺は小さくため息をついて、彼女の傍によった。
彼女が布団から手を出してきて、俺はそれを軽くにぎる。あたたかい。
「手、つめたいね。」
彼女が言った。
「彼氏と別れてから元気なさそうって、まり子が言ってたの。」
一瞬聞きながしたが、その言葉の意味をとらえて俺は固まる。まり子が?誰が?
「すぐに『彼女』って言い直してたけど。」
俺はケイトを睨む。まり子め、ごまかせなかったのか。
ケイトが黙る。俺の返事を待っているのか。俺は否定も肯定もしなかった。
「私は気にしないよ。」
みんなそう言う。それを知って興味を持って近づいてくるやつもいる。だけど、女でも男でもしばらくすると嫉妬で耐えられなくなるのだ。
どんどん疲弊していく関係。
ちゃんと信頼関係が築けて、うまくいってる人もいるのかもしれないが。
本当に気にしないやつとは、恋愛関係にならない。友だちだ。
俺はケイトの手を離そうとした。
「あ!ちょっちょっ、ちょっと待って!」
意外と素っ頓狂な声が出た。俺はキョトンとして、彼女を見ていたと思う。彼女も呆けた顔をしていた。
つかまれた手にぎゅっと力を入れられて、彼女は言った。
「私、面倒くさくないよ。浮気されても気にしないし。」
俺は、はぁっ~と深いため息をついた。
俺はバイセクシャルだけど、浮気者じゃない。
「なにを言ってるのか、わからない」
なかば怒り気味に言った。
それをぼんやりとケイトが見ていたから「ラップは聴かない?」と聞いてみた。
「わたしはレゲエの方が好き。マキシ・プリーストとか。」
「ああ、すごくいいよね」
「ワイルド・ワールドが流れると泣いちゃう。」
そう言って笑ったケイトは、いつもより少しリラックスしている感じだった。
ハイテンションでラップからメタルまで繰り広げていたクリスは、酔っ払って早々にダウンしてしまった。
まり子も「おもろいよ~。」と言ってテーブルに突っ伏している。
ケイトもウトウトしていた。こんな時、酒が飲めない自分は半分損している気がする。
「ケイト~、上のロフトベッドで寝ていいよ~。」と、まり子が言った。俺たちは下で雑魚寝だ。
だが、ケイトはすでにクッションにもたれて目を閉じていた。
俺は予備の布団を下に敷く。
「まり子、上で寝な。明日は休みか?」
「ううっ、遅番~。」
「早く寝ろ」
まり子がハシゴを上っていくと、クリスがムクッと起きてのろのろとついていった。
まさかヤルのか?と思ったが、しばらくするとどちらのだかわからないイビキが聞こえてきた。やれやれ、二人は似合いかも。
敷いた布団にケイトを寝かす。
俺も始発まで少し寝ようかと考えながら、換気扇をまわしてタバコに火をつけた。
春先だからまだ寒い。どっかにもう一枚かけ布団ないかと、あたりを見回していたら、ケイトと目が合った。
無言でずっと俺をみつめている。タバコを吸い終えてもずっと。俺は小さくため息をついて、彼女の傍によった。
彼女が布団から手を出してきて、俺はそれを軽くにぎる。あたたかい。
「手、つめたいね。」
彼女が言った。
「彼氏と別れてから元気なさそうって、まり子が言ってたの。」
一瞬聞きながしたが、その言葉の意味をとらえて俺は固まる。まり子が?誰が?
「すぐに『彼女』って言い直してたけど。」
俺はケイトを睨む。まり子め、ごまかせなかったのか。
ケイトが黙る。俺の返事を待っているのか。俺は否定も肯定もしなかった。
「私は気にしないよ。」
みんなそう言う。それを知って興味を持って近づいてくるやつもいる。だけど、女でも男でもしばらくすると嫉妬で耐えられなくなるのだ。
どんどん疲弊していく関係。
ちゃんと信頼関係が築けて、うまくいってる人もいるのかもしれないが。
本当に気にしないやつとは、恋愛関係にならない。友だちだ。
俺はケイトの手を離そうとした。
「あ!ちょっちょっ、ちょっと待って!」
意外と素っ頓狂な声が出た。俺はキョトンとして、彼女を見ていたと思う。彼女も呆けた顔をしていた。
つかまれた手にぎゅっと力を入れられて、彼女は言った。
「私、面倒くさくないよ。浮気されても気にしないし。」
俺は、はぁっ~と深いため息をついた。
俺はバイセクシャルだけど、浮気者じゃない。
「なにを言ってるのか、わからない」
なかば怒り気味に言った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
令和の中学生がファミコンやってみた
矢木羽研
青春
令和5年度の新中学生男子が、ファミコン好きの同級生女子と中古屋で遭遇。レトロゲーム×(ボーイミーツガール + 友情 + 家族愛) 。懐かしくも新鮮なゲーム体験をあなたに。ファミコン世代もそうでない世代も楽しめる、みずみずしく優しい青春物語です!
第一部・完! 今後の展開にご期待ください。カクヨムにも同時掲載。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる