神子のピコタン

びっとのびっと

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閑話 ポコッス秘話

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「くっっそっ!」
ポコッスは項垂れた。


久しぶりに見てしまった。
ピコタンに会いに来る精霊。


大きな頭に黄色いボディ、つぶらな瞳のひよこ。だが精霊様なので巨大である。

そしてポコッスは泣いた。

いつもは前世のことを忘れている。
4歳くらいまでは何も考えず、ボケらーっと過ごしていた。小さな樽をコロコロ転がしたり、ひたすら穴をほったり、泥だんご作ったり、大きな石と小さな石を交互に積み重ねたりして遊んでた。
5、6歳で『アウトドアだりぃ』と思った。???なんか違和感。
小さな四角い板を指でなぞって、ぼんやりする。

「なにやってんの。」
と母親に言われ

「スマホごっこ。」
と答えるが自分でもよくわからない。


前世の記憶がうすらぼんやりなのだ。チートとかできるわけがない。


ときどき『まーじゃん』とか『すぷら』とか『からおけ』とか頭をよぎる。
はあっ!と頭を抱えるが、次の瞬間には忘れている。
『パピコ』も、なんとなく冗談で言ったつもりだった。でも今ならわかる。だってその日は暑かったから。


精霊が赤ちゃんのピコタンを運んできた日。その姿を見たのはポコッスだけだった。


「ひよこちゃんっっっ!」
よみがえるあの味わい。口内から唾液がぶばーっと広がる。
お湯を注いで3分のラーメン。玉子とソーセージを追加してた。CM通りに白く固まらない玉子を思い出す。そのままほぼ生で食していたなあ。


そして、すぐさま、その絶望に気づいた。ここでは、この世界では食べられないのだと。


「うわぁぁぁーん!!!」


号泣する息子の声に驚いて、怪我でもした?!と、あわてて駆けつけた両親とパピコ。
ポコッスの声につられて一緒に泣きはじめるピコタン。


「あらー、赤ちゃんだわ!」
「捨て子かなあ。この子、声が出てない・・・?」
「よしよし、はぁーかわいいねぇ。」
「ねえ、おとうさん、なんか手紙入ってるよ。」
「えー」


意外と肝が据わってる両親と、冷静なパピコ。かたわらで、えぐえぐ泣くポコッス。
て、転生じゃん・・・。
しかも、なんも使えないじゃん・・・。
ニートがチートで無双できるわけないじゃん・・・。
遠く離れた木の間から、首をかしげてポコッスを見つめるひよこちゃん。


よし、忘れよう!今までも忘れてたんだし!
と固く心に誓うポコッス。


が、残念なことに、ひよこちゃんは割とちょいちょいピコタンに会いに来るのだった。

ちなみに、ポン○ライオンや、むて○丸が来ることもあるが、ひよこちゃんほどのダメージはない。
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