神子のピコタン

びっとのびっと

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ヴェロニカの物語 啓示

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久しぶりに熱を出した。
パパがお医者様を呼んでくれて「風邪が流行ってる。」と言っていた。
喉が痛くて、身体が熱い・・・

具合が悪くて今日は行けないと、ジェイデンへの伝言を姉に頼んだ。

「えー!恋人?やあだあ、もう!なんで、教えてくれなかったのよ!」
姉は興味津々で、ウキウキしながら出かけていった。

しんどい。
ママが枕元に置いてくれた水を飲む。
うまく寝つけなくて、余計なことを考えてしまう。
ジェイデンは来るかもしれない。
彼はなんでも大事にする。弟も、ピアノも、アタシですらも。

うつらうつらしていると、声が聞こえた。
「ロニー・・・」

目を開けるとジェイデンがいる。やっぱり。

「パパがいるでしょ?どうやって入ったの?」

「窓から・・・」

姉が手引きしたのかしら。

手をのばすと抱きしめてくれた。

「わっ、ほっかほかだ。」

彼が笑う。気づかなかった。笑うと目尻がこんなに下がるのね。

「うつっちゃうよ。」
そう言ってみたものの離れたくない。

「いいよ。」
そう言って彼はキスをくれた。


彼が帰ってしまって、さびしくて涙が出た。
ジェイデンを好きになってしまった。
どうしたらいいの?涙が止まらない。
どうせ、どうせ長く続かないのに・・・。

しばらく泣いて、そして諦めた。捨てられたら、その時にまたいっぱい泣けばいっか。


熱は2日で下がった。まだ少し怠かったけど、パパに休み休みでいいと言われ、雑貨店の手伝いをする。基本パパは仕入れの交渉で、アタシは売り子。

本を眺めている男の子をみつけたわ。車輪の大きな台車に乗っている。歩けないのかしら?
「何か探しもの?」
アタシは声をかけた。

男の子がアタシを見上げる。ああ、この子は斜視なのね。どこを見ているかわからない瞳。でも、すべてを見ているような瞳。

「あなたの物語を。」

男の子は言った。頭に響くような不思議な声。

アタシは震えた。どうして知ってるの?
男の子は、ニコニコしている。
その笑顔を見ていたら、なんだか落ち着いてきた・・・。

「・・・まだ・・・書いていないの。」
心のままに答えた。
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