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土手ぼくろ(九十五話)
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男も女も、助平ぼくろ、と言うんがあるんや。こいまた、ふんどしん中、着物ん中ときとるんで、いざ、本能寺となるまでわからん。面にあるほくろでわかればええども、助平ぼくろは、股ぐらにあるんやけん。
オラは自慢じゃねえども、亀の頭に二つ鎮座しとる。南南東の方角に一つ、そんで北北西に一つですて。こいは、鬼門と裏鬼門みてえなもんかのう、左右に仲良くのう。女の、あれとあれが、大好きな証だわい、生まれつきの好き者ですて。オラは、女衒に向いとるんかいのう、ほくろがのう、ほくろが……
女の助平面は、目と目が離れておれば、そいだけ男好きと言うのう。また、近づかんでも、お密ん匂いが、ぷんぷんして誘っておるわい。置屋ん女は、根っからの真打、ど助平女がたんとおる。男は女を喰うつもりで向かっても、逆に女の返り討ちに会い、ふらふらんなって帰るわ。
そいらの女衆は、当然の如く、助平ぼくろ持ちが多いんや。一つや二つでねえど、三つ四つ、いや、まだまだ、胡麻並みもいんど。男と女の助平勝負、こいは、ほくろん数がもの言うぞい。
二つ星ん男は、一つ星ん女には勝てる、二つ星ん女とは五分五分じゃ。オラみてえな二つ星は、三つ星ん女には勝てんかもしんね、まして胡麻土手にはのう。そうは言うども、二つ星の意地で、蟷螂の斧で勝負挑んだるわい。
オラ「お上や、こん品川宿で、一番の胡麻土手女はどこにおるかえ?」
お上「ど助平女んこつやな、うちにもおるで、一番でのうても、ええやんか?」
オラ「うん、女真打に赤玉ぶっても許してもらわんよか、まあ、ええな。ほんじゃ、こん置屋一の、土手ぼくろ女、お手合わせ頼むて」
お上「はいよ、朝までかけて勝負したれ、お前、青菜に塩んなんでよ。あ、そうか、お前も助平ぼくろ持ちかいな、胡麻土手ゆうからのう」
オラ「そんや、お上。こいは自慢だども、亀ん頭に二つもあるわい。南南東と北北西にありもうす。二つ星が女狙ってやす」
お上「お前なあ、たった二つじゃ叶わんでよ。うちのミメは胡麻やで。まあ、夜中にミメんよがり声が宿中に響いて、ワテが目醒ましたら、お前ん勝ちや。ほな、二階に上がれ。まんづ、負けやな。けけけっ……」
二つ星と、胡麻土手ん勝負や。助平ぼくろの数では叶わん。オラの三つの技繰り出しても、どうやろて。
昔、女忍者に教わった四十八手んなかに、弁慶の薙刀と言うんがある。こいは、薩摩ん剣法の一刀斬りみてえで、一突きで決めるんや。
ちぇすとーー、こん一突きや。よし、試してみんど……
オラ「入るぞい、ミメゆうたな、今夜は寝かさんで、朝までな。あの、お上から聞いたけんど、胡麻土手やて?」
ミメ「そんや、アテは持って生まれた胡麻んせいで、男に目覚めるんも早くてのう。男から男へと流れとるうちに、こん置屋にたどり着んたんや。アテんとってな、置屋は天職や。銭貰うて極楽いける、こら堪らんわ」
オラ「そうかえ、天職かえや。やはり、胡麻土手んせいやな。わかったで。オラは星二つや、無類の好きもんだども、さすがに胡麻並みにねえ。なんか、もう、勝負ありやな。う、じゃ、こうすんど、オラ薩摩ん武士なんど。もとは越後ん百姓だども、ここは薩摩弁を真似して薩摩武士ん技で向かったるわい」
ミメ「越後でん薩摩でんええけん、アテ悦ばしてみい。赤玉飛ばしたるぞい」
オラ「赤玉? 空砲じゃ勘弁してくれんごわすか。そいは頼もしか。そんじゃ、おいどんは、薩摩の一刀斬りで挑もうそう。おはんの、恥ずかしか骨がきしむでよ。たんと、よがってくんせいや」
ミメ「薩摩かえや? そい、喰らわしてんか」
オラ「ほんのこて、よかおなごや。じゃっど、壊しやせんど、商売道具だで。そいは、安心してたもんせ、そんじゃ、いきもうそう」
ミメ「どうすんや? 初めの一突きで、はっ、何んなん、あっ」
オラ「……ちぇすとーー」
おいどんの、薩摩ん一刀斬りでどげななったかは、語らんでもわかりもうそう。ミメには屁の河童でごわした。ほんのこて、こん技は難しか。まして胡麻土手女には、そいやった。助平ぼくろん数は正直でごわす。
ああ、朝方、青い面して宿を出てもうした。薩摩弁も、抜けなくなりもうそう……
オラは自慢じゃねえども、亀の頭に二つ鎮座しとる。南南東の方角に一つ、そんで北北西に一つですて。こいは、鬼門と裏鬼門みてえなもんかのう、左右に仲良くのう。女の、あれとあれが、大好きな証だわい、生まれつきの好き者ですて。オラは、女衒に向いとるんかいのう、ほくろがのう、ほくろが……
女の助平面は、目と目が離れておれば、そいだけ男好きと言うのう。また、近づかんでも、お密ん匂いが、ぷんぷんして誘っておるわい。置屋ん女は、根っからの真打、ど助平女がたんとおる。男は女を喰うつもりで向かっても、逆に女の返り討ちに会い、ふらふらんなって帰るわ。
そいらの女衆は、当然の如く、助平ぼくろ持ちが多いんや。一つや二つでねえど、三つ四つ、いや、まだまだ、胡麻並みもいんど。男と女の助平勝負、こいは、ほくろん数がもの言うぞい。
二つ星ん男は、一つ星ん女には勝てる、二つ星ん女とは五分五分じゃ。オラみてえな二つ星は、三つ星ん女には勝てんかもしんね、まして胡麻土手にはのう。そうは言うども、二つ星の意地で、蟷螂の斧で勝負挑んだるわい。
オラ「お上や、こん品川宿で、一番の胡麻土手女はどこにおるかえ?」
お上「ど助平女んこつやな、うちにもおるで、一番でのうても、ええやんか?」
オラ「うん、女真打に赤玉ぶっても許してもらわんよか、まあ、ええな。ほんじゃ、こん置屋一の、土手ぼくろ女、お手合わせ頼むて」
お上「はいよ、朝までかけて勝負したれ、お前、青菜に塩んなんでよ。あ、そうか、お前も助平ぼくろ持ちかいな、胡麻土手ゆうからのう」
オラ「そんや、お上。こいは自慢だども、亀ん頭に二つもあるわい。南南東と北北西にありもうす。二つ星が女狙ってやす」
お上「お前なあ、たった二つじゃ叶わんでよ。うちのミメは胡麻やで。まあ、夜中にミメんよがり声が宿中に響いて、ワテが目醒ましたら、お前ん勝ちや。ほな、二階に上がれ。まんづ、負けやな。けけけっ……」
二つ星と、胡麻土手ん勝負や。助平ぼくろの数では叶わん。オラの三つの技繰り出しても、どうやろて。
昔、女忍者に教わった四十八手んなかに、弁慶の薙刀と言うんがある。こいは、薩摩ん剣法の一刀斬りみてえで、一突きで決めるんや。
ちぇすとーー、こん一突きや。よし、試してみんど……
オラ「入るぞい、ミメゆうたな、今夜は寝かさんで、朝までな。あの、お上から聞いたけんど、胡麻土手やて?」
ミメ「そんや、アテは持って生まれた胡麻んせいで、男に目覚めるんも早くてのう。男から男へと流れとるうちに、こん置屋にたどり着んたんや。アテんとってな、置屋は天職や。銭貰うて極楽いける、こら堪らんわ」
オラ「そうかえ、天職かえや。やはり、胡麻土手んせいやな。わかったで。オラは星二つや、無類の好きもんだども、さすがに胡麻並みにねえ。なんか、もう、勝負ありやな。う、じゃ、こうすんど、オラ薩摩ん武士なんど。もとは越後ん百姓だども、ここは薩摩弁を真似して薩摩武士ん技で向かったるわい」
ミメ「越後でん薩摩でんええけん、アテ悦ばしてみい。赤玉飛ばしたるぞい」
オラ「赤玉? 空砲じゃ勘弁してくれんごわすか。そいは頼もしか。そんじゃ、おいどんは、薩摩の一刀斬りで挑もうそう。おはんの、恥ずかしか骨がきしむでよ。たんと、よがってくんせいや」
ミメ「薩摩かえや? そい、喰らわしてんか」
オラ「ほんのこて、よかおなごや。じゃっど、壊しやせんど、商売道具だで。そいは、安心してたもんせ、そんじゃ、いきもうそう」
ミメ「どうすんや? 初めの一突きで、はっ、何んなん、あっ」
オラ「……ちぇすとーー」
おいどんの、薩摩ん一刀斬りでどげななったかは、語らんでもわかりもうそう。ミメには屁の河童でごわした。ほんのこて、こん技は難しか。まして胡麻土手女には、そいやった。助平ぼくろん数は正直でごわす。
ああ、朝方、青い面して宿を出てもうした。薩摩弁も、抜けなくなりもうそう……
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