江戸情話 てる吉の女観音道

藤原 てるてる

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おかわりごっこ(八十三話)

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 世間には、様々なごっこがあるのう。
 ちゃんばらごっこ、いくさごっこ、ままごっこ、睦ごっこ、などとな。そん中で睦ごっこなんかは、ままごっこの続きみたいんもんよのう。ガキどもが、いちゃついてて、まだ、一戦を越えねえ遊びよ。
 男は皮被りから始まり、やがて皮剥け、そんで筆おろし、盛りは黒焼けとな。女は真一文字から始まり、やがて膜緩み、そんで御開門、盛りは黒焼けとな。なんだかんだで、つまるところ、同じじゃて。
 男盛り女盛りに付きもんは、こいから語る、おかわりごっこや。いや、ごっこどころでねえ、男と女の真剣勝負。どっちかが根を挙げるまでや。
 おかわりに次ぐおかわり、また、おかわり、また……
 またまた、おかわりとな、どこまで続くんや……

 オラ 「姉御、あんたが噂に聞く、本所町屋の底なしのおリンさんかえ?」
 おリン「ああ、そんや。アテと遊びたいんかい、お前、すけべ玉、何個あるん?」
 オラ 「そりゃ二つやんけ、あたぼうよ」
 おリン「そんなら、アテが一つ握りつぶしてもええな? まだ一つあれば、そんでええやない」
 オラ 「何を言うんや、子種あってのすけべ心や、玉ありきやで」
 おリン「そん覚悟で、アテと勝負すんかいや。お前、先に根あげたら、片玉になんかもやで、ええな?」
 オラ 「そりゃ、オラは無類の女好きや、受けて立つわいな。もしものう、姉御が先に根あげたら、置屋に売り飛ばすぜよ。オラ、女衒の親分の弟子や。土佐の女衒のな」
 おリン「アテはな、四ツ谷で桃結いの前から股で凌いで来たんや。辻あがりやで。置屋ん女なんて、ぬるま湯よ、手緩いわい。そいよりも、アテの体ん虜んなてもうて、手放さんわ」
 オラ 「ほかや、じゃ置屋でのうて、女衒の飼い女、闇ん女にしたる。姉御こそ、そん覚悟あるんけ?」
 おリン「男なんて、ちょろいもんよ。アテが負けるかいな。よしゃ、ええで。先客の二人こなしたら、お前ん番や、待っとれ」
 オラ 「おお、茶でも飲んで待っとるわい……」

 怖いよー、強気に出てもうたけんど、あん女は何もんや。もしオラが負けたら、片玉にされてしまうわい。今更、逃げらんねえ、どうしよう、逃げようかい、いや、どうする。
 ここは、オラん得意技ん牛突きだけでのうて、あれ、やっかな。のぬふ突き。まだ慣れてねえけんど、前に女忍者から教わっておる。こいも闇ん女の技や。あん時は、のぬふ腰喰らい寝込んだもんや。女の凄技の、男版やで。のるかそるかやな。後には引けん。もう猶予はならん、いざ、底なし女め……

 おリン「おーい、お前ん番や、来てええで」
 オラ 「姉御、もう二人こなしたんかえ、早いのう、さすがやなあ」
 おリン「晩からお前で五人目や、一日で十人位は喰わんとな。はぁ、一息つくで、さっきん四人目ん男が尺並みで堪えたわ。なあ、今日はお前で仕舞いんする。朝までにしんかえ?」
 オラ 「ええで、オラがあと五人分位の大砲ぶったる」
 おリン「さっきは脅かして御免な。胆を試しただけやで。アテも無類の色好きや、お前と同じやで、似たもんどおしや。こうしんか、お互いの得意技で、おかわりごっこしねかえ」
 オラ 「ああ、そんだのう。オラんのは、越後の牛突きと、のぬふ突きや。のぬふ突きは、女忍者から教わった、試させてんか」
 おリン「じゃあの、おかわりに次ぐおかわりの繰り返しでええなあ。アテもおかわりすんで、お前もな、負けた方は、蕎麦おごるんやで。ほら、お前ん牛突きからや、遠慮すんな……」

 そいからというもの、二人は上んなったり下んなったり。オラもおかわり、姉御もおかわりと、おかわりの連続なり。姉御の得意技の三段締め喰らい、降参しかけるも反転に転ず。憶えたての、のぬふ突きで形勢逆転、姉御ん目が虚ろになるなり……

 おリン「まだ……おかわり、おくれ……」
 オラ 「こっちこそ、おかわりたのむ……」
 おリン「アテが先や、おかわり……」
 オラ 「オラが先や、おかわり……」



 朝方、仲良く同時に、また、果てた。
 そんで、二人して「おかわり……」と言った切り、深い眠りに入った。
 何回おかわりし合ったこつか、布団のみぞ知る。
 まあ、痛み分けや。勝ち負けなし、夢ん中や……
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