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怪我の功名、町屋娘のお世話に(八十二話)
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オラは今、確かに女衒見習いだども、何もそれ一本ではねえ。元からの飛脚ん仕事もやっておる、まあ二足の草鞋を履いてるんだのう。こん飛脚は、オラに向いとる、物預かったら後は届けるだけ。いろんな所へと、まるで旅気分で廻れる。途中で、ええ女見つけながらや。
また、帰りしなには、寺や神社に寄ったり、そん場所の置屋でも遊ぶて。だすけ、江戸中の色町にも詳しゅうなったりするのう。役得みてえだなも。それはそんでも、こん飛脚には怪我が付き物じゃでよ。道々には、混んでくんと、大八車、馬、牛、犬、猫なんかも邪魔したりするて。
また、手前で慌てていて人にあたったり、横丁の角にぶつかったりもすんど。早く早くと、小走りになったりすんと、本当に気を付けんとのう。
実はのう、こん前に、とんでもねえ怪我してしまったて。そんで泊まるはめにのう、届け先の谷中の町屋のことや……
オラ 「ごめんなすって、オラは飛脚で、深川から谷中へと来たんやけんど。
さっきのこつや、軒先の角っこで足切ってもうて、血がたんと出て腫れてのう。痛くて痛くて、オラん長屋まで帰れなくなっての、今晩泊めてくれて」
町屋娘「そいは大変やなあ。ささ、入っとくれ、足が悪いんや、ゆっくりしてっての」
オラ 「世話んなりやす。悪いけんど、足ん血が止まんねえ、布と桶を頼むて」
町屋娘「あら大変や、町医者呼ぼうかいや?」
オラ 「いや、血さえ止まればええ、明日にでも長屋ん近くの町医者行くて」
町屋娘「アテに出来るこつあれば、なんでん言ってけれ」
オラ 「じゃあ、すまんども、足袋、股引、ふんどしまで血が付いてもうたんや。銭出すすけ、洗ってはもらえんやろか?」
町屋娘「なんなりとのう、宿は泊めるだけのうて、お客はんの面倒も見るん。
そんじゃの、風呂ん後に脱いだ着物出しといてや。お前さん、血止まりそうかえ、アテが押さえっかえ、大丈夫かえ?」
オラ 「かなりと傷が深くてのう、二寸近いのう、こりゃまずいわ」
町屋娘「どれ、アテも手貸す、ここ押さえてま、止まればええのう」
オラ 「あんまオラに近付くと、よけい血が出るて」
町屋娘「はっ、押さえてるだけだて、押さえんこつにはのう」
オラ 「そ、そんだども、オラは男盛りだすけ、女ん香りに弱か」
町屋娘「そんげんこつ考えてんでねえ、それどころじゃねえねか」
オラ 「だども、オラ女大好きだ。脈が高くなるすけ、オラだけでええ」
町屋娘「お前さん、何言っとるやで、あんこつは、今は忘れておきや。そいにな、アテらはな、夜の御用聞きもすんのやで、けっけっけっ。血が止まった後は、アテが傷ん痛みなんか、床技で取っとるわい」
オラ 「うん、そいでいこう。夜ん楽しみん取っておこう。じゃ、オラだけで血止めてから、風呂入って、洗濯してもらってからにのう」
町屋娘「はいよ、早う止めや。風呂湧いとるで、またのう……」
はあー、やっと行った。こうも女に足押さえられたら、むらむらや。あん女の、胸元は見えるは、ええ尻しとるわで、そんなんで止まるかいな。血は出るわ、やる気も出るわで、次にいけんやろ。
オラ 「アネサ、やっと止まったすけ、風呂入るて」
町屋娘「よかったなも、着物は脱いだら出しといてな、ぬるかったら言っとくれ」
オラ 「洗いもんの駄賃出すでな、頼むぞい。ふんどしもな」
町屋娘「なあ、足ん傷で難儀やろ、アテが体流すわ、ええか?」
オラ 「ええんかいや。じゃお言葉に甘えて、たのんます」
町屋娘「さあ、ここや、脱いでな。アテも上脱ぐで……」
オラ 「アネサ、ええ体しとるのう、夜まで待てんわい」
町屋娘「ここでは上だけ脱ぐんや、そういうもんやで、下は布団の中でや。今は我慢しいな、夜んなったら好きんしてええで」
オラ 「じゃ、すぐ洗ってな。ああ、そんでええ、布団の中で待っとるで」
町屋娘「せっかちやなあ、これからやろ、ほな、背中からや……」
ほっ、風呂上りでぽかぽかや。しかし、旨そな体しとったのう。こいばかりは、喰ってみんとわかんねえんが、女の体やて。さあ、そろそろ来るっぞ。
町屋娘「お前さん、入ってええかえ?」
オラ 「遅いぞい、こちとら大砲が暴発寸前やで。風呂場で、さんざんじらされたすけ、堪忍袋の緒が切れそうや」
町屋娘「そかや、じゃアテが、違う袋ん面倒みたるわいな、空んしたるで」
オラ 「傷ん痛みも忘れさせてけろ、ああそんだ、上んなってな」
町屋娘「はいよ、痛いの痛いの、アテん中へ飛んでけーってか」
オラ 「そや、頼むで、のっかってけろ……」
風呂上がりは、睦ごとに丁度ええのう。
身も心も、ぽかぽかや。女ん温もりで傷は癒えた。
足ん痛みは、子種と一緒にアネサん元へ飛んでった。
ええ女に会えた、こいも怪我の功名と言うんかいや、そうしとこ。
また、帰りしなには、寺や神社に寄ったり、そん場所の置屋でも遊ぶて。だすけ、江戸中の色町にも詳しゅうなったりするのう。役得みてえだなも。それはそんでも、こん飛脚には怪我が付き物じゃでよ。道々には、混んでくんと、大八車、馬、牛、犬、猫なんかも邪魔したりするて。
また、手前で慌てていて人にあたったり、横丁の角にぶつかったりもすんど。早く早くと、小走りになったりすんと、本当に気を付けんとのう。
実はのう、こん前に、とんでもねえ怪我してしまったて。そんで泊まるはめにのう、届け先の谷中の町屋のことや……
オラ 「ごめんなすって、オラは飛脚で、深川から谷中へと来たんやけんど。
さっきのこつや、軒先の角っこで足切ってもうて、血がたんと出て腫れてのう。痛くて痛くて、オラん長屋まで帰れなくなっての、今晩泊めてくれて」
町屋娘「そいは大変やなあ。ささ、入っとくれ、足が悪いんや、ゆっくりしてっての」
オラ 「世話んなりやす。悪いけんど、足ん血が止まんねえ、布と桶を頼むて」
町屋娘「あら大変や、町医者呼ぼうかいや?」
オラ 「いや、血さえ止まればええ、明日にでも長屋ん近くの町医者行くて」
町屋娘「アテに出来るこつあれば、なんでん言ってけれ」
オラ 「じゃあ、すまんども、足袋、股引、ふんどしまで血が付いてもうたんや。銭出すすけ、洗ってはもらえんやろか?」
町屋娘「なんなりとのう、宿は泊めるだけのうて、お客はんの面倒も見るん。
そんじゃの、風呂ん後に脱いだ着物出しといてや。お前さん、血止まりそうかえ、アテが押さえっかえ、大丈夫かえ?」
オラ 「かなりと傷が深くてのう、二寸近いのう、こりゃまずいわ」
町屋娘「どれ、アテも手貸す、ここ押さえてま、止まればええのう」
オラ 「あんまオラに近付くと、よけい血が出るて」
町屋娘「はっ、押さえてるだけだて、押さえんこつにはのう」
オラ 「そ、そんだども、オラは男盛りだすけ、女ん香りに弱か」
町屋娘「そんげんこつ考えてんでねえ、それどころじゃねえねか」
オラ 「だども、オラ女大好きだ。脈が高くなるすけ、オラだけでええ」
町屋娘「お前さん、何言っとるやで、あんこつは、今は忘れておきや。そいにな、アテらはな、夜の御用聞きもすんのやで、けっけっけっ。血が止まった後は、アテが傷ん痛みなんか、床技で取っとるわい」
オラ 「うん、そいでいこう。夜ん楽しみん取っておこう。じゃ、オラだけで血止めてから、風呂入って、洗濯してもらってからにのう」
町屋娘「はいよ、早う止めや。風呂湧いとるで、またのう……」
はあー、やっと行った。こうも女に足押さえられたら、むらむらや。あん女の、胸元は見えるは、ええ尻しとるわで、そんなんで止まるかいな。血は出るわ、やる気も出るわで、次にいけんやろ。
オラ 「アネサ、やっと止まったすけ、風呂入るて」
町屋娘「よかったなも、着物は脱いだら出しといてな、ぬるかったら言っとくれ」
オラ 「洗いもんの駄賃出すでな、頼むぞい。ふんどしもな」
町屋娘「なあ、足ん傷で難儀やろ、アテが体流すわ、ええか?」
オラ 「ええんかいや。じゃお言葉に甘えて、たのんます」
町屋娘「さあ、ここや、脱いでな。アテも上脱ぐで……」
オラ 「アネサ、ええ体しとるのう、夜まで待てんわい」
町屋娘「ここでは上だけ脱ぐんや、そういうもんやで、下は布団の中でや。今は我慢しいな、夜んなったら好きんしてええで」
オラ 「じゃ、すぐ洗ってな。ああ、そんでええ、布団の中で待っとるで」
町屋娘「せっかちやなあ、これからやろ、ほな、背中からや……」
ほっ、風呂上りでぽかぽかや。しかし、旨そな体しとったのう。こいばかりは、喰ってみんとわかんねえんが、女の体やて。さあ、そろそろ来るっぞ。
町屋娘「お前さん、入ってええかえ?」
オラ 「遅いぞい、こちとら大砲が暴発寸前やで。風呂場で、さんざんじらされたすけ、堪忍袋の緒が切れそうや」
町屋娘「そかや、じゃアテが、違う袋ん面倒みたるわいな、空んしたるで」
オラ 「傷ん痛みも忘れさせてけろ、ああそんだ、上んなってな」
町屋娘「はいよ、痛いの痛いの、アテん中へ飛んでけーってか」
オラ 「そや、頼むで、のっかってけろ……」
風呂上がりは、睦ごとに丁度ええのう。
身も心も、ぽかぽかや。女ん温もりで傷は癒えた。
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