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土佐兄と、穴兄弟の契り(七十三話)
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女ん売り買いで、一番しやすいんは置屋から置屋への移し替えだそんだ。なにも年増んなんまで、同じ置屋にいるわけでもねえ。何か訳あって、よそ行ったり、また戻ったりもする。吉原なんぞは、やり取りで大金が動く。その点、下町の置屋は安か銭で動く。もっとは、場末の摩窟なんかは、材木の売り買いみてえなもんやと。土佐兄は、そんな置屋へオラを連れて行った……
土佐兄「ええか、女衒はのう、女をなるだけ安く買い、高く売り付けて利ざやを稼ぐんやき。買う時は、なんだかんだ難癖を付け買い叩き、値切るんや。でもって、売る時は褒め言葉を付け、高下駄を履かせて売る。女ん値段は、手前で抱いて見て決めるんやき。面は見ての通り、器量はすぐわかる。大事なんは中身やき。見た目はさっぱりでも、着物ん下は宝やったりすんが五万とおる。抱かねばわかんねえぜよ。己の刀で値を付けるんや」
オラ 「女の身も心もよう知らねばなんねとは、こいですのう」
土佐兄「おまんは、まず、女百人斬りを早うこなせ。一日も早うな。女に飢えとるようじゃ、値付けんのに、ぽっぽしていかんきな。こいは真剣勝負なんや、玉袋ん中、空っぽんして駆け引きやんのや。まあ今にわかる。オレも前の夜には、タキとかに空にされてから向かうがぜよ。ええか、一滴も残らずな。目が曇る元ぜよ、ええな」
オラ 「わかりやした、オラは長屋のキクに、空っぽにされてからだのう」
土佐兄「そうや、で女の見方はな、女を六等分に分けるんや。上の上、上の下、中の上、中の下、下の上、下の下ってな。まあ、下町の置屋は、中の下や、下の上が多い。値が付けやすいきな。おまんの仕事始めや、手前で抱いて見て、そんで値付けや」
オラ 「あのう、オラだけだと値の付けようがねえ、どげなふうに?」
土佐兄「そんうちにわかる、まずは、女を六等分に分けな、後で聞かせな。オレが先に味見やっから、そん後で、おまんも味見やるんや」
オラ「そうすっと、土佐兄とオラは穴兄弟ってこつになり申す」
土佐兄「そうや、江戸の女衒はみな穴兄弟みたいなもんやき、仲ええで」
オラ「じゃあ、ありがたか汚れまみれになって、六等分に分けやす」
土佐兄「今夜、木場の吉本屋に行け。そこのネネゆう女をオレの後に抱け。近場の置屋に移りたいんやと、一発で値付けや。そいに迷ったら、わかるまで抱きまくれ、じゃ、ええな」
ほかや、女を六等分にすんのやな、土佐兄と味方が違ったらどないしよう。まさに真剣勝負やな、手前の欲だけでのうて、稼業ともなればのう。いままでは、オラの刀の暴れるに任せてたども、こいからは違う。土佐兄の言う、一本気で抱くんやなあ。値付けんのに迷いは禁物や。ようわかった。こいから、ネネゆう女を一刀だしたるわい……
オラ「お上、置屋を移りてえてた、ネネをたのむ」
お上「待ってたよ、さっきまで土佐親分に値付けてもらってたんや。あんたが、今度から弟子やて。あん子をなるだけ高く買ってな。ええもん持っとるで、抱けばわかるしな、二階の角部屋におるでな」
オラ「こいは、遊びじゃなか、真剣勝負させてもらいま」
さても、初仕事や。面や器量でのうて、物の良し悪し、抱き心地、床技などでかや。女ん体を六等分に分けるやて、こりゃ難しいんと違うけ。んっ?
わかるんかいな、わからんだろう、女衒の生業も大変やのう。こうなったら、オラがマグロ男になって、あれこれやってもらおうか。
ネネ「おや、若いのう、今度はアンさんが、ワッチに値付けてくれるんかえ。さっきまで土佐親分の技喰らいくたくたやけんど、たんと吟味してな」
オラ「あのう、こいが初仕事で、ようわからん。試すにも技あんまねえ。オラがマグロんなるすけ、ネネの技を全部出してくれて」
ネネ「いや、そうじゃのうて、客で来たつもりで、がむしゃらにしがみ付いたらええ」
オラ「いやいや、こいは仕事なんや。手前で極楽という訳にいかんてな。困ったのう。じゃあのう、ネネの得意技やってくれて、六等分に分けっから」
ネネ「そうでのうて、ええから思いっ切り抱かんか、後でわかるんや。アンさんが極楽いっとる時にな、観音様が教えてくれるんやで」
オラ「ほかほか、では、土佐兄の後のすけべ沼に、あっ、こいは失敬、いくでよ」
ネネ「ええんや、すけべ沼で小判見つけておくれ、高くたのむでな」
オラ「観音様次第や、わかるまで抱きまくったるわい」
ネネ「そんでええんじゃー。抱けー」
女を六等分に分けて、そんで値付けるなんか、本当に難しか。
そいに、体だけでのうて、女のすけべ心も大事じゃ。
あん女は、すけべ心は良し、よって大目に見てやろう。土佐兄には、中の上と伝えようっと。
土佐兄「ええか、女衒はのう、女をなるだけ安く買い、高く売り付けて利ざやを稼ぐんやき。買う時は、なんだかんだ難癖を付け買い叩き、値切るんや。でもって、売る時は褒め言葉を付け、高下駄を履かせて売る。女ん値段は、手前で抱いて見て決めるんやき。面は見ての通り、器量はすぐわかる。大事なんは中身やき。見た目はさっぱりでも、着物ん下は宝やったりすんが五万とおる。抱かねばわかんねえぜよ。己の刀で値を付けるんや」
オラ 「女の身も心もよう知らねばなんねとは、こいですのう」
土佐兄「おまんは、まず、女百人斬りを早うこなせ。一日も早うな。女に飢えとるようじゃ、値付けんのに、ぽっぽしていかんきな。こいは真剣勝負なんや、玉袋ん中、空っぽんして駆け引きやんのや。まあ今にわかる。オレも前の夜には、タキとかに空にされてから向かうがぜよ。ええか、一滴も残らずな。目が曇る元ぜよ、ええな」
オラ 「わかりやした、オラは長屋のキクに、空っぽにされてからだのう」
土佐兄「そうや、で女の見方はな、女を六等分に分けるんや。上の上、上の下、中の上、中の下、下の上、下の下ってな。まあ、下町の置屋は、中の下や、下の上が多い。値が付けやすいきな。おまんの仕事始めや、手前で抱いて見て、そんで値付けや」
オラ 「あのう、オラだけだと値の付けようがねえ、どげなふうに?」
土佐兄「そんうちにわかる、まずは、女を六等分に分けな、後で聞かせな。オレが先に味見やっから、そん後で、おまんも味見やるんや」
オラ「そうすっと、土佐兄とオラは穴兄弟ってこつになり申す」
土佐兄「そうや、江戸の女衒はみな穴兄弟みたいなもんやき、仲ええで」
オラ「じゃあ、ありがたか汚れまみれになって、六等分に分けやす」
土佐兄「今夜、木場の吉本屋に行け。そこのネネゆう女をオレの後に抱け。近場の置屋に移りたいんやと、一発で値付けや。そいに迷ったら、わかるまで抱きまくれ、じゃ、ええな」
ほかや、女を六等分にすんのやな、土佐兄と味方が違ったらどないしよう。まさに真剣勝負やな、手前の欲だけでのうて、稼業ともなればのう。いままでは、オラの刀の暴れるに任せてたども、こいからは違う。土佐兄の言う、一本気で抱くんやなあ。値付けんのに迷いは禁物や。ようわかった。こいから、ネネゆう女を一刀だしたるわい……
オラ「お上、置屋を移りてえてた、ネネをたのむ」
お上「待ってたよ、さっきまで土佐親分に値付けてもらってたんや。あんたが、今度から弟子やて。あん子をなるだけ高く買ってな。ええもん持っとるで、抱けばわかるしな、二階の角部屋におるでな」
オラ「こいは、遊びじゃなか、真剣勝負させてもらいま」
さても、初仕事や。面や器量でのうて、物の良し悪し、抱き心地、床技などでかや。女ん体を六等分に分けるやて、こりゃ難しいんと違うけ。んっ?
わかるんかいな、わからんだろう、女衒の生業も大変やのう。こうなったら、オラがマグロ男になって、あれこれやってもらおうか。
ネネ「おや、若いのう、今度はアンさんが、ワッチに値付けてくれるんかえ。さっきまで土佐親分の技喰らいくたくたやけんど、たんと吟味してな」
オラ「あのう、こいが初仕事で、ようわからん。試すにも技あんまねえ。オラがマグロんなるすけ、ネネの技を全部出してくれて」
ネネ「いや、そうじゃのうて、客で来たつもりで、がむしゃらにしがみ付いたらええ」
オラ「いやいや、こいは仕事なんや。手前で極楽という訳にいかんてな。困ったのう。じゃあのう、ネネの得意技やってくれて、六等分に分けっから」
ネネ「そうでのうて、ええから思いっ切り抱かんか、後でわかるんや。アンさんが極楽いっとる時にな、観音様が教えてくれるんやで」
オラ「ほかほか、では、土佐兄の後のすけべ沼に、あっ、こいは失敬、いくでよ」
ネネ「ええんや、すけべ沼で小判見つけておくれ、高くたのむでな」
オラ「観音様次第や、わかるまで抱きまくったるわい」
ネネ「そんでええんじゃー。抱けー」
女を六等分に分けて、そんで値付けるなんか、本当に難しか。
そいに、体だけでのうて、女のすけべ心も大事じゃ。
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