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潮来遊郭、流れ女(三十九話)

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 さて、今夜は流れ女と決めたろかいな、上方の女がええの。おそらくは、江戸にもいられのうなって、ここまで流れて来たんやろて。そん上方の女は、見た目ではわからんの、やり手婆に聞いてみっかや。

 オラ  「江戸から遊びに来たんだども、上方ん女はどこかや」
 やり手婆「五軒目の置屋にいっぞ。おまん、物好きよの」
 オラ  「いわく付きの女もええもんやろ、たんと鍛えられてんやろて」
 やり手婆「ええかや、上方ん女は、どすけべやでな。ええんか?」
 オラ  「けっこうやないけ、真剣勝負したるわいな」
 やり手婆「あん女は、体中を使って、一度に男、三人喰ったりするんやで。女の二つん口と、もう一つの男にもある、あん口で相手するんやでな」
 オラ  「ああ、菊のこつやな。オラは菊には興味ねえ。女の両方の口を、思いっ切りと楽しみてえんや」
 やり手婆「ほかや、わかったなや。後な、銭盗まれんようにな」
 オラ  「大丈夫だて。銭はふんどしん中にあるすけの」
 やり手婆「また、そげな臭いとこに入れとんのけ。そんじゃ、盗まれんの。じゃ、たんと遊んで来いや」
 オラ  「ほな、どうもな。駄賃やで」
 やり手婆「ううっ、臭いわな」

 さてと、五軒目やな、あったあった、扇屋って書いてあるわい。どげな女かいな、銭盗まれんようにな、まあ、ふんどしん中だわな。ああそっか、朝まで寝ないでやっか、そうしよう。

 オラ 「あんた、上方ん女やそうな。よう潮来でやっとるの」
 上方女「アタイは、大阪は堺やで。訳あって江戸に出て来たんやけどな。よう言わんけんど、後は足抜けや。借金踏み倒しやな。親が悪いんや。借金のかたにアタイを売ったんやさかい」
 オラ 「ああ、親のせいや。でも、江戸からよう逃げて来れたのう」
 上方女「そいは、毎日毎日、安か銭で男のおもちゃになんのも、アホ臭か。そんでの、なじみになった男を騙しての、闇に紛れてとんずらや。好きになった振りしてな、そんで、そいからも逃げたんやで」
 オラ 「ああ、そんでもって、潮来遊郭に紛れ込んどる訳やな。オラに、そげな大事んこつ、話してええんかいや?」
 上方女「あんたは、大丈夫さかいな。雰囲気でわかるんやで。アタイみたいに、世から逃げとる女には、わかるん。人は、面や心は誤魔化せても、影は正直やで。せやかやな、あんたは、ほんまに、どすけべやな。女の体がたまんねえって、面に書いてあるさかい。悪い人じゃねえな、口も堅いなや、だから安心なんや」
 オラ 「たしかに、口は堅いの。まして女泣かせ棒は、カチコチやで。みんな、ありがたがって、とろけ面んになっからな」
 上方女「ふふっ、アタイは男三人を同時に極楽送りも出来るよってな。野郎どもとな、四人そろって果てる時もある。観音冥利やで。どすけべ魂と、三つの口で、今まで生き抜いて来たんや。アタイは男に喰われとるうちに、男を喰うんが甲斐性になったんや。あんたに、上方女のどすけべ魂、教えてやるわ。朝まであっから、初めはアタイの体を喰いまくりな。そっから先は、アタイがあんたを喰いまくるさかいな、ええな」
 オラ 「そいは、極楽相撲ってこつやな。よしゃ、がぶり寄つでいくで」
 上方女「あんたとアタイは、同じ魂もっとるさかいな、何もかもの、ようわかるん。アタイの、かずのこん一粒一粒、めめずん一匹一匹よう楽しんでんか。さあ、来てえな。みんな忘れて、この世ん極楽に逃げような」
 オラ 「ああ、そやな。そん通りや。なんもかも忘れて、一緒にな。そうやそうや、お前はオラじゃ……」



 いやはや、朝んなんまで、お互いの体をむさぼったわな。
 あん女には、女のすけべ魂を教わったの。命懸けで生き抜いて来た女や、強い女やったわ。
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