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生娘と(二十六話)

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 今日の仕事は、下町は木場へ手紙届けんばなんね。こん飛脚の商売は、あっちゃこっちゃ、行ったり来たり、ほんとてえへんだ。まあ、道中の女衆を見ながら、忙しなくやってますて。なんが楽しみかといえば、ええ女、ええ体しとる女を見つけるこつよ。
 ええっと、そん辻の右の、桶屋の隣の家やな。あった、あった、こん材木屋さんや。

 オラ「ごめんくださいの、文あずかって来ましたて」
 お上「おお、ご苦労さんや、お茶のんでいきや」
 オラ「へっ、ありがとごわす。こうも暑いと、こたえますて。悪いども、こんだ水もらえますかいの」
 お上「ちょうど今、スイカ切ったのがあるわい。こまい娘に、持ってこさせるよって、待っててな、ゆっくりしいや」
 オラ「そいはどうも、ごちんなりやす」

 真夏はこたえるの。汗だくだくや。スイカくれるって、ありがてえの。こん材木屋は、儲かっていそうやの。奥に蔵があるわ。

 娘っ子「おまっとうさんね。暑かったやろに、たんとどうぞ」
 オラ 「うまそなスイカ、ありがとの。あれっ、かなり若いの、おめえ」
 娘っ子「ウチは十六じゃ。ここん店で、世話んなっとるんや」
 オラ 「何か訳がありそうやな。優しゅう、してもらってっけ?」
 娘っ子「ええ人達や。んでも、もう直の、ここ出ねばなんね。ウチは、みなし児なんや。ここは遠縁で、そんで世話になってたんよ」
 オラ 「出て行くって、どこへじゃ?」
 娘っ子「こん木場の置屋やよ。もう店は決まっておるんや。悲しいけんど、仕方ねえ、なるしかなんね」
 オラ 「こいも渡世よの、まあ、そん前に、オラと、どやろ。あん仕事は、荒くれ野郎どもが、めちゃくちゃんすんど。まだ、おぼこなんじゃけん、相当こたえるぞい」
 娘っ子「ウチは怖いんじゃ、初めてん男は、優しいんがええ。アニさん、優しゅうしてくれっけ?」
 オラ 「ああ、まかせてくんしょ」
 娘っ子「うん、わかった。明日休みもらうんで、会ってもええ」
 オラ 「じゃあ、明日ん午後、深川の町屋で待っとるわな」

 なんか、生娘と御縁が出来そうやな。初めてやな、どう手ほどきやんのかいな、わかんねえの。

 オラ 「おお来たかえ、こねかと思ったいや。まあ、やんわりと、おいおいとな。しかし、可愛いのう」
 娘っ子「ウチ、初めてなんじゃ。優しゅうしてな」
 オラ 「ああ、わかちょる。目閉じててな、えかや、ではの……」
 娘っ子「うん……」



 初もん、やったわ。
 オラん腕の中で、小さくなってたわいの。あん娘には、こいから荒波が襲ってくるわ。
 波ん飲まれるじゃのうて、波ん乗っていけや。
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