江戸情話 てる吉の女観音道

藤原 てるてる

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うな丼の後、うなぎ娘と(二十一話)

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 田町の置屋のお上との、とんだ一戦が終わり長屋に着いた。
 いやはや、色年増の腰技はすごかったわいの。昔取った杵柄を、喰らわしてもらいやした、ごちになりましたの。節々が痛いや、次の仕事が入るまで、昼まで寝てっかな。
  ……あー寝た寝た、さて、飯は何にすっか。そんだ、たまには、うな丼にしようて。

  ……あー美味かった、夏は精をつけんとな、こん仕事は疲れるわな。さてっと、お上の置屋に繰り出すべ。きのう、あいてなかったミヤがえんだけんどな。

 オラ「こんちは、きのうは、ごちになりやした」
 お上「ありゃ、恥ずかしいなも、ワテこそ、ごちそうさまや。また、お手合わせ願うわね」
 オラ「そいはもう、いつでも声かけてくだせいや。今日は、きのう言ってた、ミヤはいるかえ?」
 お上「ああ、きのうは、あいにくやったの、ワテは良かったども。二階で待っててな。ミヤが行くよってな」

 しかしの、うなぎはなして、ああも、ぬるぬるしとるんかいの。あん、ぬるぬるは、女衆に見習ってほしいわい。

 オラ「おっ、ミヤけ、きのうは、会えんかったの」
 ミヤ「ワラも会いてかったて。あんたんことは、お上さんから聞いちょるよ。土くせえ、うなぎみてえな女やって、何やそれ」
 オラ「なんか、にょろにょろしとるの、面も、うなぎみてえだでよ。ほら、おめんの二の腕も、ぬるぬるしとるやんけ」
 ミヤ「ワラは成田の出で、うなぎや、どじょうで育ったかやら」
 オラ「そっか、そいでか、たいそう贅沢なもんじゃの」
 ミヤ「ワラの股倉は、ねろねろどころじゃねえでよ。あんたんも、ねっちょろねっちょろに、はまってな」
 オラ「ああ、ねろねろ、とろとろは大好きじゃ……」



 ミヤにも、取柄があるわいな。あんだけ、ねろねろしてりゃ、泊まり客が増えるわけじゃ。
 そうか、うなぎで育ったかや、うなぎはええのう。うな丼の後はうなぎ娘、うなぎ尽くしじゃ。
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