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横浜中華紅街、大陸娘(十七話)

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 今日は、通し飛脚で横浜まで来たからには、遊んでくべ。さすが港町は、異国娘がわんさかといるわいの。オラは越後にいたころ、同じ長屋の台湾娘に、筆おろし、してもろうたんや。残念なこつに、不発に終わてもうて、筆おろしか何かわかんねかったのう。まあ、そん後、江戸に出てからは女百人斬り一直線や。なんか、唐の娘には禍根があるの。
 よしゃ、あん時の分まで花火の連発したるわい。

 オラ「こん横浜の、異国娘と遊べるとこは、どこですかい?」
 町衆「お前さん、江戸かえ?」
 オラ「ああ、オラは飛脚してるすけ、こっちに用があって来たんだども」
 町衆「せっかく、港町に来たんや、大陸娘がええぞ。言葉はちんぷんかんぷんでも、同じものがついてるぞい」
 オラ「そいは、あたりまえじゃ。オラは越後にいたころ、喰っとるわい」
 町衆「大陸娘かえ?」
 オラ「いや、台湾娘じゃ。不発に終わったけんどな」
 町衆「じゃこんだは、大陸娘に、そのときの仇を返しな」
 オラ「そんつもりだ。がまん出来ねえて。どこじゃ」
 町衆「まあまあ、四軒先を右に行け。すぐわかるぞえ」
 オラ「おおっ、どうもな」

 あそこまで行って、そこを右じゃな、あったあった、中華紅街と看板あり。こいまた、唐娘だらけじゃねえかや。柳腰が多いのう。台湾娘でのうて大陸娘を選ばんとの、えっーと、迷うのう。あんキセル吸うとる、細見女にしよて。

 オラ 「おめさん、大陸け?」
 大陸娘「ニーハオ、上海から来たあるよ、よろちくね」
 オラ 「名は何や? 横浜、長いんけ?」
 大陸娘「ワタチ、メイリン。ここ六年いるね」
 オラ 「日の本の男は、優しいかえ?」
 大陸娘「優しいあるね。すぐ極楽いくね。楽あるね」
 オラ 「日の本の男は、やわなんやなあ。じゃ、大陸の男は?」
 大陸娘「唐の男、数連発できるあるよ。やるやる、一晩で二桁打つあるね。花火、天井まで飛ぶある、ワタチ、びっくりね」
 オラ 「こっちにも、抜か六ってえんが、あるけんどな」
 大陸娘「何それ、いいから、早く早く、男たくさん来るね。アータ脱ぐ、ワタチ脱ぐ、早くしてね」
 オラ 「あれっ、胸の間に刺青あんな。忍ってえ字だの。こいは、また、何かえ?」
 大陸娘「これ、がまんすること。忍は唐の字ある。ほんとは、悲しいある。売られて来たある。帰りたい。お金たくさん、返すある。男たくさん、ほしい。ワタチ、体くたくた。だから、阿片やる。疲れ取れるある」
 オラ 「えっ、そうかいの? 何か、やばいこつ聞いたの。今んのは、聞かんこつにすんけ。そいは難儀よのう。あれ、女の極楽を味わったらどうじゃえ?」
 大陸娘「唐の男じゃないとだめあるね。数連発できんとね」
 オラ 「んーーー。まあ、何とかやるよって、何とか……」



 しかし、大陸娘は手強いのう。鋼のように、鍛えられておる。
 オラは越後の仇を、ここで討つこつ出来たども。あん女は、極楽へいったんやろか。
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