16 / 101
馬女には馬男、猿女には猿男(十六話)
しおりを挟む
そもそも、こうじゃねえと困るのである。
古今東西、人だけでなく、猫も犬もお猿さんも馬も、そう出来とる。雌に合わせてそうなのか、雄に合わせてそうなのかは、定かではない。おそらく、それぞれ生き物の、子に合わせてなのかもしれんけんど。
話が少々、かとうなってしもうたわ。吉原には、探せば、己にちょうどええのがおる。こいは、男と女の組み合わせの話じゃ。
オラ「サチさんよ、男もいろいろ、女もいろいとじゃが、たんと見てきたやろ。男んのが馬んようだったら、ほんと、参るじゃろうな。また、猿んようだったら、物足りねえべさ」
サチ「そんだの、自分に合うんがちょうどええの」
オラ「やっぱ、馬女には馬男よのう、こいが一番あんべえがええ。猿女に馬男が挑んで来たら、こわれてまうの。そんでこんだは、馬女に猿男も、あれだのう。ほんと、男と女は組み合わせが大事じゃ」
サチ「世に、歌麿なんて言うけんど、アテはまだ見てねえ」
オラ「あいは、浮世絵のはったりだ、あんなんいねえ。おまんの生業も大変よのう、何が来るやら、わかんねもんな」
サチ「でも、なんとかなんのが、男と女ってもんよ。そいになも、アテらは、こっそりと惚れ薬をぬるんよ」
オラ「そん惚れ薬って?」
サチ「男はんを、すぐそん気にさせ、どげなもんでもなんとかなる香油じゃよ。このぬるぬるで、体はぽかぽかし、早う極楽へいってくれるん。アテらは、数こなさないけんから、楽なんが一番よってな。日によっては、飯くう暇もねえぞえ。夜は夜で、泊まり客が、朝まで寝かせてくんねえ時もあるんよ」
オラ「まして、そいが馬男じゃたら余計こたえるのう。サチさんよ、そん香油で今日は楽にしたらええ」
サチ「おまえさんのは、ちょうどええから、使わねえよ。あん香油なしの方が、なごう楽しめるぞい。おまえさん、気に入った。上になってええか?」
オラ「ああ、身も心も、ぴったりとな……」
吉原の女衆は大変である。
いつ馬男に当たるやら、わからんて。そうかそうか、香油でしのいでたかや、ご苦労なこってす。
古今東西、人だけでなく、猫も犬もお猿さんも馬も、そう出来とる。雌に合わせてそうなのか、雄に合わせてそうなのかは、定かではない。おそらく、それぞれ生き物の、子に合わせてなのかもしれんけんど。
話が少々、かとうなってしもうたわ。吉原には、探せば、己にちょうどええのがおる。こいは、男と女の組み合わせの話じゃ。
オラ「サチさんよ、男もいろいろ、女もいろいとじゃが、たんと見てきたやろ。男んのが馬んようだったら、ほんと、参るじゃろうな。また、猿んようだったら、物足りねえべさ」
サチ「そんだの、自分に合うんがちょうどええの」
オラ「やっぱ、馬女には馬男よのう、こいが一番あんべえがええ。猿女に馬男が挑んで来たら、こわれてまうの。そんでこんだは、馬女に猿男も、あれだのう。ほんと、男と女は組み合わせが大事じゃ」
サチ「世に、歌麿なんて言うけんど、アテはまだ見てねえ」
オラ「あいは、浮世絵のはったりだ、あんなんいねえ。おまんの生業も大変よのう、何が来るやら、わかんねもんな」
サチ「でも、なんとかなんのが、男と女ってもんよ。そいになも、アテらは、こっそりと惚れ薬をぬるんよ」
オラ「そん惚れ薬って?」
サチ「男はんを、すぐそん気にさせ、どげなもんでもなんとかなる香油じゃよ。このぬるぬるで、体はぽかぽかし、早う極楽へいってくれるん。アテらは、数こなさないけんから、楽なんが一番よってな。日によっては、飯くう暇もねえぞえ。夜は夜で、泊まり客が、朝まで寝かせてくんねえ時もあるんよ」
オラ「まして、そいが馬男じゃたら余計こたえるのう。サチさんよ、そん香油で今日は楽にしたらええ」
サチ「おまえさんのは、ちょうどええから、使わねえよ。あん香油なしの方が、なごう楽しめるぞい。おまえさん、気に入った。上になってええか?」
オラ「ああ、身も心も、ぴったりとな……」
吉原の女衆は大変である。
いつ馬男に当たるやら、わからんて。そうかそうか、香油でしのいでたかや、ご苦労なこってす。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
狩野岑信 元禄二刀流絵巻
仁獅寺永雪
歴史・時代
狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許された上、父や兄を差し置いて江戸画壇の頂点となる狩野派総上席の地位を与えられた。さらに、狩野派最初の奥絵師ともなった。
特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。
しかし、彼は、主君が将軍になったその年に死んでいるのである。これはどういうことなのか。
彼の特異な点は、「松本友盛」という主君から賜った別名(むしろ本名)があったことだ。この名前で、土圭之間詰め番士という武官職をも務めていた。
舞台は、赤穂事件のあった元禄時代、生類憐れみの令に支配された江戸の町。主人公は、様々な歴史上の事件や人物とも関りながら成長して行く。
これは、絵師と武士、二つの名前と二つの役職を持ち、張り巡らされた陰謀から主君を守り、遂に六代将軍に押し上げた謎の男・狩野岑信の一生を読み解く物語である。
投稿二作目、最後までお楽しみいただければ幸いです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる