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第一章 家族編
14話 僕はみんなに愛されている
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やばい! アレン君から離れないとだめだ!と思った僕は、アレン君の体をドンっと押して、3歩ほど後ずさりした。急いで兄さまの誤解を解こうと思い、手を前に出してあわあわと口を動かす。
「に、兄さま! 僕なにもされてないですよ!」
「でも泣いているじゃないか。誰に泣かされたんだい?」
「そ、それは……」
そう言われてちょっと黙る。確かに、この涙はアレン君が僕のことを信じてくれないかもと思って、不安になったから流れた涙だ。でもでも、否定しなきゃ!
怒って目を細めている兄さまにお返事しようと、手を胸元でぐーにして声を出す。
「あのね、アレン君だけど……アレン君じゃないの!」
「……もしかして、僕のせいかな? リュカのお守りに水の魔法陣を仕込んだせいで、怖くなって泣かせてしまったのかい?」
「あれはやっぱり、兄さまがやってくれたのですか!?」
「そうだよ。それにね、リュカの場所が分かるように、父さまがお守りに追跡魔法をかけてくれていたんだ。でも、駆けつけるのが遅くなってしまったから、リュカに嫌な思いを……」
後悔するように下を向く兄さま。それを見て、僕のことを助けてくれたのにどうして誇ってくれないの?と考えてしまう。そのまま兄さまのことをぼんやりと見続けていたら、僕が乗ってきた馬車が止まっている道から、父さまが出てきた。
「リュカ、大丈夫か?」
「父さままで……どうして?」
「実行犯を捕まえるために来た。まあ、まさかリュカを性的に襲おうとしているとは思わなかったが……怪我はしていないか? どこか痛いところは?」
父さまはいつも通り眉をしかめていて、僕のことを睨んでいるように見える。でも、父さまの口から出てくるのは、罵倒じゃなくて心配の言葉。それに父さまは、兄さまからもらったこのお守りに追跡魔法をかけてくれていた。
……兄さまも父さまも、僕のことを嫌いじゃなかったの?
「な、なんで……? 兄さまは僕のこときらいなんでしょう?」
「そんなわけない! 僕はリュカのことが大好きだよ!」
「父さまは……?」
「……嫌いじゃない」
2人の返事を聞いて、僕はつばを飲み込んだ。
今まで嫌われていると思っていたのは、全部僕の勘違いだったの?
……僕ってこんなに愛されていたんだ。
目も鼻も熱くなる。視界が端からじわじわとぼやけていく。だめだ、泣いちゃう。
「僕、父さまに……兄さまに……きらわれているとおもってた!! あってもはなしかけてくれないし、だっこもしてくれない! わらってもくれない!!」
「リュカ……」
「ぼ、僕、きょうしんじゃうとおもってた! うぅ……うわぁーん!!!」
下を向いていたはずの兄さまが、泣きそうな目で僕を見る。僕の口からは、絶対大丈夫と信じ込ませて気付かないようにしていた言葉が、ぽろぽろと外にでていく。
死ぬ運命に逆らおうと必死にもがいて、頑張って皆に好かれようと行動しても空回りして……ずっとずっと不安だった。
そんな僕のとまらない涙を見て、兄さまは僕をひしりと抱きしめた。
「ごめんねリュカ! 僕はお母様にいい子のフリをして自分の身を守っていたんだ!! そのせいで……そのせいで!!」
「うぅ、えっぐ……にい、さまぁ」
「僕の身勝手な行動でリュカが嫌な目にあってしまったというのに……!! 本当にごめんなさいリュカ!!」
そう言って、兄さまは真珠のようにキラキラした大粒の涙を流しながら、僕に回した腕の力をさらに強くする。兄さまは、痛くなるほど強く僕のことを抱きしめたまま、ピクリとも動かない。僕も兄さまの背中に震えた手を回して答える。
2人で抱き合って泣いていると、父さまはズボンが土で汚れることなんて厭わずに、地面に膝をついて、僕のほっぺたに手を添えて話し出した。
「リュカ、そのままでいい。リュカは頭がいいから、これは君の母がやったことだって気付いていただろう。でも、リュカが生まれたときの話も聞いてくれないか?」
父様は真剣に僕の目を見て話す。僕は鼻水をずびずびとすすりながら、こくんと首を縦に動かした。
「に、兄さま! 僕なにもされてないですよ!」
「でも泣いているじゃないか。誰に泣かされたんだい?」
「そ、それは……」
そう言われてちょっと黙る。確かに、この涙はアレン君が僕のことを信じてくれないかもと思って、不安になったから流れた涙だ。でもでも、否定しなきゃ!
怒って目を細めている兄さまにお返事しようと、手を胸元でぐーにして声を出す。
「あのね、アレン君だけど……アレン君じゃないの!」
「……もしかして、僕のせいかな? リュカのお守りに水の魔法陣を仕込んだせいで、怖くなって泣かせてしまったのかい?」
「あれはやっぱり、兄さまがやってくれたのですか!?」
「そうだよ。それにね、リュカの場所が分かるように、父さまがお守りに追跡魔法をかけてくれていたんだ。でも、駆けつけるのが遅くなってしまったから、リュカに嫌な思いを……」
後悔するように下を向く兄さま。それを見て、僕のことを助けてくれたのにどうして誇ってくれないの?と考えてしまう。そのまま兄さまのことをぼんやりと見続けていたら、僕が乗ってきた馬車が止まっている道から、父さまが出てきた。
「リュカ、大丈夫か?」
「父さままで……どうして?」
「実行犯を捕まえるために来た。まあ、まさかリュカを性的に襲おうとしているとは思わなかったが……怪我はしていないか? どこか痛いところは?」
父さまはいつも通り眉をしかめていて、僕のことを睨んでいるように見える。でも、父さまの口から出てくるのは、罵倒じゃなくて心配の言葉。それに父さまは、兄さまからもらったこのお守りに追跡魔法をかけてくれていた。
……兄さまも父さまも、僕のことを嫌いじゃなかったの?
「な、なんで……? 兄さまは僕のこときらいなんでしょう?」
「そんなわけない! 僕はリュカのことが大好きだよ!」
「父さまは……?」
「……嫌いじゃない」
2人の返事を聞いて、僕はつばを飲み込んだ。
今まで嫌われていると思っていたのは、全部僕の勘違いだったの?
……僕ってこんなに愛されていたんだ。
目も鼻も熱くなる。視界が端からじわじわとぼやけていく。だめだ、泣いちゃう。
「僕、父さまに……兄さまに……きらわれているとおもってた!! あってもはなしかけてくれないし、だっこもしてくれない! わらってもくれない!!」
「リュカ……」
「ぼ、僕、きょうしんじゃうとおもってた! うぅ……うわぁーん!!!」
下を向いていたはずの兄さまが、泣きそうな目で僕を見る。僕の口からは、絶対大丈夫と信じ込ませて気付かないようにしていた言葉が、ぽろぽろと外にでていく。
死ぬ運命に逆らおうと必死にもがいて、頑張って皆に好かれようと行動しても空回りして……ずっとずっと不安だった。
そんな僕のとまらない涙を見て、兄さまは僕をひしりと抱きしめた。
「ごめんねリュカ! 僕はお母様にいい子のフリをして自分の身を守っていたんだ!! そのせいで……そのせいで!!」
「うぅ、えっぐ……にい、さまぁ」
「僕の身勝手な行動でリュカが嫌な目にあってしまったというのに……!! 本当にごめんなさいリュカ!!」
そう言って、兄さまは真珠のようにキラキラした大粒の涙を流しながら、僕に回した腕の力をさらに強くする。兄さまは、痛くなるほど強く僕のことを抱きしめたまま、ピクリとも動かない。僕も兄さまの背中に震えた手を回して答える。
2人で抱き合って泣いていると、父さまはズボンが土で汚れることなんて厭わずに、地面に膝をついて、僕のほっぺたに手を添えて話し出した。
「リュカ、そのままでいい。リュカは頭がいいから、これは君の母がやったことだって気付いていただろう。でも、リュカが生まれたときの話も聞いてくれないか?」
父様は真剣に僕の目を見て話す。僕は鼻水をずびずびとすすりながら、こくんと首を縦に動かした。
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