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第一章 家族編
7話 僕の知っているアレン君じゃない!
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あらすじ
路地裏で男の人に男娼だと間違われた挙句、フードが脱げたとたんに「悪魔」と罵られたリュカ。泣いていると、同じく路地裏にいた赤髪の男の子が抱っこしてあやしてくれた。その男の子の名前が「アレン」で、今いる路地裏は孤児が色を売っている場所だと知ったリュカはあまりの情報量に整理できず、アレン君の肩に頭を押し付けて、ううーんと唸った。
___________________
多分、僕がキャパオーバーしたのがバレたんだろう。アレン君はくすくす笑いながら、肩に押し付けている僕の頭を片手でがしがしとなでた。なでる動作に合わせて、僕の頭がぐわんぐわんと動く。僕が視線を横に動かすと、ふっと笑っているつり目の美少年が目の前に見えた。至近距離で素晴らしいご尊顔を見てしまった僕は、こんなスチル購入した覚えはないよ~!!と足をバタバタさせる。
僕のこの行動をアレン君は降ろしてほしいんだと勘違いしたようで、僕を地面にそっと降ろした。アレン君は僕と同じ視線になるようにしゃがんで、顔を合わせて話し出す。
「よし、もう大丈夫か?」
「うん……えっと、アレン君?」
「んー? なんだ?」
「えっと、その、ありがとう」
僕がお礼を言うとは思っていなかったようで、アレン君は目をまん丸にして驚く。僕は無口なクールキャラのアレン君しか知らないから、なんだか表情をこんなにも出しているのがおかしく思えて、ふふっと笑ってしまった。当のアレン君はそんな僕の表情を気にせずに、「貴族なのにお礼が言えるのは偉いな」ともう一度僕の頭を撫でながら言って、フードをかぶせて抱っこしてくれた。
「一回さ、俺の家くる? その服けっこう汚れてるし、なんか貸してやるよ」
「あ、そっか。僕、いますごくきたないんだ……」
「……あー、風呂も入るか?」
魔法が使えるのが当たり前なこの世界では、水が足りないという理由で平民が困ることはない。家が小さいとかそういう事情がない限り、お風呂場があるのはごくごく一般的だ。だけど、僕はいつもマリーに入れてもらっているから一人で洗えない。本当はお風呂に入りたかったけど、首を振って断ることにした。僕が首を振ったのを確認したアレン君は、特に何も言わずに路地裏を出て、慣れた様子で大通りを歩いていく。
アレン君が歩いている間、無言になるのがなんだか怖かった僕は何か話題がないかと頭をフル回転させた。けれど、ポンコツな僕の頭じゃ何も思いつかなかったから、ずっと疑問に思っていたことを恐る恐る聞くことにした。
「あのね……ア、アレン君はどうしてあそこにいたの……?」
「……あーあそこな、ギルドから家に帰るときの近道なんだよ。治安はわりぃけど昼間ならまだ安全だからよく通ってんだよな。ちなみに俺は冒険者をやってる」
「わぁ! ギルド! ぼうけんしゃ!!」
ゲーム要素たっぷりな言葉に目を輝かせて反応する僕だけど、心の中ではこの質問をしたことに後悔していた。アレン君がゲーム内で過去を語ってくれなかったのは、男娼だったことを隠したかったからなのかなって思って質問してしまった僕を誰か殴ってほしい。
でも、いま冒険者になっているのなら、ゲームのアレン君はどうして冒険者をやめてわざわざ騎士団に入ったのだろう。
ぐるぐる考え込んでいると、アレン君は上機嫌な様子で僕に話しかけてきた。僕がギルドや冒険者という言葉にすごく反応したから、冒険者に興味があるんだとアレン君は勘違いしたみたい。
「やっぱり身分が違っても、冒険者は男のあこがれの的だよな~! まあ、俺が冒険者になったのは、金がいいからって理由もあんだけど。多分、お前は……えっと、」
「あ、僕リュカだよ!」
「ほ~ん、リュカ様ね」
「ちがう! リュカ様じゃなくてリュカってよんで!」
僕は名前を呼んでもらえるということに興奮して、ふんすふんすと荒れた鼻息を披露しながら、両手をグーにして様をつけずに呼んでほしいと伝える。アレン君は言葉遣いは悪いけれど、最低限の礼儀を尽くそうとはしていたようで、不敬にならないかと心配した顔をしながら「……リュカ」と一言だけ言ってくれた。一方、僕は不敬にならないよということをとびきりの笑顔でうなずくことで伝えた。
その後はずっとアレン君に抱っこしてもらいながら、薬草摘みのお話とか受けたことのある魔物討伐クエストのお話とかを聞いていた。そしたら、いつのまにかアレン君の家に着いていたようだ。平民街ではよく見かけるレンガ造りの一軒家。その中に僕たちは入った。
路地裏で男の人に男娼だと間違われた挙句、フードが脱げたとたんに「悪魔」と罵られたリュカ。泣いていると、同じく路地裏にいた赤髪の男の子が抱っこしてあやしてくれた。その男の子の名前が「アレン」で、今いる路地裏は孤児が色を売っている場所だと知ったリュカはあまりの情報量に整理できず、アレン君の肩に頭を押し付けて、ううーんと唸った。
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多分、僕がキャパオーバーしたのがバレたんだろう。アレン君はくすくす笑いながら、肩に押し付けている僕の頭を片手でがしがしとなでた。なでる動作に合わせて、僕の頭がぐわんぐわんと動く。僕が視線を横に動かすと、ふっと笑っているつり目の美少年が目の前に見えた。至近距離で素晴らしいご尊顔を見てしまった僕は、こんなスチル購入した覚えはないよ~!!と足をバタバタさせる。
僕のこの行動をアレン君は降ろしてほしいんだと勘違いしたようで、僕を地面にそっと降ろした。アレン君は僕と同じ視線になるようにしゃがんで、顔を合わせて話し出す。
「よし、もう大丈夫か?」
「うん……えっと、アレン君?」
「んー? なんだ?」
「えっと、その、ありがとう」
僕がお礼を言うとは思っていなかったようで、アレン君は目をまん丸にして驚く。僕は無口なクールキャラのアレン君しか知らないから、なんだか表情をこんなにも出しているのがおかしく思えて、ふふっと笑ってしまった。当のアレン君はそんな僕の表情を気にせずに、「貴族なのにお礼が言えるのは偉いな」ともう一度僕の頭を撫でながら言って、フードをかぶせて抱っこしてくれた。
「一回さ、俺の家くる? その服けっこう汚れてるし、なんか貸してやるよ」
「あ、そっか。僕、いますごくきたないんだ……」
「……あー、風呂も入るか?」
魔法が使えるのが当たり前なこの世界では、水が足りないという理由で平民が困ることはない。家が小さいとかそういう事情がない限り、お風呂場があるのはごくごく一般的だ。だけど、僕はいつもマリーに入れてもらっているから一人で洗えない。本当はお風呂に入りたかったけど、首を振って断ることにした。僕が首を振ったのを確認したアレン君は、特に何も言わずに路地裏を出て、慣れた様子で大通りを歩いていく。
アレン君が歩いている間、無言になるのがなんだか怖かった僕は何か話題がないかと頭をフル回転させた。けれど、ポンコツな僕の頭じゃ何も思いつかなかったから、ずっと疑問に思っていたことを恐る恐る聞くことにした。
「あのね……ア、アレン君はどうしてあそこにいたの……?」
「……あーあそこな、ギルドから家に帰るときの近道なんだよ。治安はわりぃけど昼間ならまだ安全だからよく通ってんだよな。ちなみに俺は冒険者をやってる」
「わぁ! ギルド! ぼうけんしゃ!!」
ゲーム要素たっぷりな言葉に目を輝かせて反応する僕だけど、心の中ではこの質問をしたことに後悔していた。アレン君がゲーム内で過去を語ってくれなかったのは、男娼だったことを隠したかったからなのかなって思って質問してしまった僕を誰か殴ってほしい。
でも、いま冒険者になっているのなら、ゲームのアレン君はどうして冒険者をやめてわざわざ騎士団に入ったのだろう。
ぐるぐる考え込んでいると、アレン君は上機嫌な様子で僕に話しかけてきた。僕がギルドや冒険者という言葉にすごく反応したから、冒険者に興味があるんだとアレン君は勘違いしたみたい。
「やっぱり身分が違っても、冒険者は男のあこがれの的だよな~! まあ、俺が冒険者になったのは、金がいいからって理由もあんだけど。多分、お前は……えっと、」
「あ、僕リュカだよ!」
「ほ~ん、リュカ様ね」
「ちがう! リュカ様じゃなくてリュカってよんで!」
僕は名前を呼んでもらえるということに興奮して、ふんすふんすと荒れた鼻息を披露しながら、両手をグーにして様をつけずに呼んでほしいと伝える。アレン君は言葉遣いは悪いけれど、最低限の礼儀を尽くそうとはしていたようで、不敬にならないかと心配した顔をしながら「……リュカ」と一言だけ言ってくれた。一方、僕は不敬にならないよということをとびきりの笑顔でうなずくことで伝えた。
その後はずっとアレン君に抱っこしてもらいながら、薬草摘みのお話とか受けたことのある魔物討伐クエストのお話とかを聞いていた。そしたら、いつのまにかアレン君の家に着いていたようだ。平民街ではよく見かけるレンガ造りの一軒家。その中に僕たちは入った。
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