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回復
食事
しおりを挟む目の前に並ぶのは、黄金色のスープ、目に優しい緑のサラダ。
ミルク色のパンに、黄色のバター。
赤く熟れたトマトには、オリーブオイルと胡椒。
カラメルソースたっぷりのプリン。
熟れたメロンに、みずみずしい葡萄。
その他、彩り豊かな食事が所狭しとテーブルに並べられていた。
ロメリアは、それらを眺めやりながら、黙々と小さな口で一生懸命に食事をしていたが、ついに耐えきれなくなって声を上げる。
「そんなに見ないで頂戴」
こちらを熱心に見つめてくる視線に耐えきれずに顔を上げると、ガブリエルが相変わらずの無表情で悪びれる様子もなく興味深そうに頷いた。
「人が食事するところをこんな風に見るのは初めてだ」
「私も、食事するところをこんな風に見られるのは初めてよ」
不貞腐れたように、ナフキンで口元を拭いながら、ロメリアは唇尖らせる。
「大体、しばらくは来ないでって言ったじゃないの。まだ5日も経っていないわ」
「5日も経っている」
「……」
日の経過に対する人間の考え方は人それぞれである。故に、ロメリアは何も言い返すことが出来なかった。
それに結局のところ、ガブリエルが会いに来てくれたことは純粋に嬉しかったから、これ以上不機嫌を装うのも疲れて、ロメリアは話題を変える。
「あなたも何か食べる?」
「君の食事を奪いにきたのではない」
「分かっているわよ。だけど、私1人では食べきれないんだもの。もうお腹もいっぱいだし」
「……まだ、パンを少ししか食べていないようだが」
「これでも食べている方よ」
ガブリエルは唖然とした風に口を閉じる。
しまった。これでは心配して欲しいと言っているようなものである。ロメリアは慌てて言葉を付け加えた。
「これからたくさん食べられるようになるわ」
「そうか?」
「うん」
ロメリアはガブリエルを安心させるために「ほら見て、まだ食べられる」と言わんばかりに、フォークで果実を刺して食べて見せた。
実際、果実ならまだ食べられる。
問題は匂いがきつい肉料理だ。
肉を食べねば身体の回復も遅れるのかもしれないが、それでも無理なものは無理である。
さすがにそこまでは頑張れず、ロメリアは小動物のように果実をシャクシャクと咀嚼するしかなかった。
そんなロメリアを見て何を考えたのか、ガブリエルはテーブルに置かれた料理を見つめた後で口を開く。
「私もいただくことにする。いいだろうか?」
「うん」
すでに、ナイフとフォークは用意されている。ガブリエルはそれらを両手に持って、ほとんど音もたてずに食事を始めた。
思えば、ガブリエルが食事をするところをこんなにも近くで見る機会はあまりなかった。
幼い頃は何度か見たが、最近は見ていない。
食事をする時も、ガブリエルは彼らしく静かで、物音1つ立てない。
ピンと背筋を伸ばした姿勢は美しく、粛然とさえしている。
あまりにも彼らしい食事の仕方が面白くて、ロメリアは食事をする手を止めて、先ほど自らが言った不満を棚に上げて、彼を凝視する。
「……美味しい?」
彼が口へ運んだものを咀嚼し終えたのを見届けて、ロメリアは問いかけた。
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