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覚悟

悔い

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「私はこの国に忠誠を捧げている。いざという時には己の命を盾にしてでも……国王陛下や王女殿下を守ることになるだろう」
「……うん」
「それでもし死ぬことになったとしても、悔いはない」

いかにもガブリエルが言いそうなことだと思い、ロメリアは絶句することもなく再び「うん」と相槌を打つ。

その生き方を否定する気は微塵もなかった。

1つの道をただひたすらに歩むのは、人が思う以上にとても難しいことだ。他に道がない分、後戻りして道を変えることも出来ない。

だけれど、自分自身に厳しく、また不器用な彼は、1つの道を歩み極めることこそが自分に出来る唯一のことだと考えているし、望むことでもあるのだろう。

死んでほしいとは決して思わないが、彼が生きたいように生きて悔いがないというのであれば、それでいいと思う。

たくさんの悔いを残して、悔し涙を流しながら死んでしまうよりはずっといい。

「ただ……騎士として生き、誰にも恥じることのない死を迎えられたとして。1つ心に残ることは、あるように思う」
「……?」

意外な言葉に、ロメリアは俯きかけていた顔を上げる。

「君との日々をもっと大切に過ごしたかった。そう思いながら私は死ぬのだろう。今、君と離れたとして、死に方に悔いが残ることはないだろうが、生き方に悔いを残すことになるのは間違いない」
「……」

ロメリアは今度こそ絶句して、何も言葉が出てこなかった。ガブリエルから発せられたとは思えないほどの感情と、確信の籠もった声に、心が類を見ないほど激しく揺さぶられる。

「王女殿下と結ばれる未来があるのなら、その未来を選びたかった……そんな心残りを抱くことはない」
「……」
「今、私が確信をもって言えることはそれしかない。君を安心させるのに十分な言葉ではないと理解しているが……過度な言葉を告げるような無責任なことは出来ない」

ガブリエルらしくなく、言葉が多かった。

彼が自らの足りない言葉を補おうと必死なことがよく分かる。

だからこそ、いい加減な言葉を返すことが憚られて、ロメリアは口を開くことが出来なかった。

何も答えることの出来ないロメリアを見て、ガブリエルはまだ言葉が足りないと判断したのか、再び口を開く。

「君と離れること以上に、死に際に悔いに思うことはないだろう」

言葉に詰まったように、ガブリエルはそのまま沈黙した。

彼の言いたいことは痛いほどよく伝わってきた。

これほどまでに言葉を尽くされて、理解できないわけがなかった。
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