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運命の足音
回復
しおりを挟む「あぁ、ロメリア。大丈夫かい?また何かあったらすぐに医者を呼ぶからね」
「お父様。そんなに心配しないで。もう大丈夫よ」
「お腹が空いたのではない?何かお腹に優しいものを作ってもらいましょう」
「さっき、スープを頂いたばかりよ、お母様。それに急にたくさん食べると胃が大変なことになっちゃうわ」
愛する娘が、寝台に横たわる姿を見て、公爵夫妻は心を痛めた。
何か目に見える形での解決方法があれば、なんでもするつもりでいた公爵夫妻だったが、公爵家専属の医師からは「原因不明」と言われ、さらに王都で有名な医師を呼び、再度検査したがやはり「原因不明。身体的な問題はない。精神的な疲労によるものと考えられる」と答えられてしまい、為す術もなくなってしまった。
(まぁ、急に倒れて……しかも3日間眠り続けたのだから……それで原因不明と言われても納得出来ないわよね)
そう。ロメリアはあれから3日間滾々と眠り続けたらしい。
突然、頭に走った激痛。そしてこの3日間……何かを頭に刻みつけられたような気がしたのだが……今は、無限に続く霧に覆われてしまったかのように思い出せない。
(本当に……一体何だったのかしら)
不安に苛まれながらも、ロメリアの心は穏やかだった。
何故かというと、なんとあのガブリエルがロメリアが倒れたその日に屋敷を訪ねてくれたのだというからだ。それから3日間通い、目が覚めた瞬間には確かにガブリエルが近くにいた。
久しぶりに見たガブリエルは、以前会った時以上に精悍になっていた。相変わらずの無表情で何を考えているのかさっぱり分からなかった上に、何も話してはくれなかったけれど、目が覚めた時にそこにいてくれた。
その事実が、ロメリアにはなによりも嬉しかった。
「ロメリア……」
「なあに、お父様。私はもう大丈夫よ」
「ガブリエル殿の騎士任命式に参列するのはやめておかないかい。こんな状態のお前を連れてはいけないよ」
「嫌よ。お父様」
「……ロメリア」
「大丈夫よ、本当に。それに、ガブリエルの晴れ姿を見ないと……私、一生後悔するわ」
ロメリアの瞳には、強い意思が宿っていた。公爵夫妻は目を見合わせて「仕方がない」と溜息を吐きながら「ただし、医師も同伴させるからね」と強く、無理をしないようにと、ロメリアに約束させた。
ロメリアの体調は、ガブリエルの騎士任命式が行われる日程の2日前まで芳しくはならなかった。
しかし、神の導きか。
ガブリエルの騎士任命式の日に、ロメリアの体調は、完全復活を遂げていた。
まるで、その場に彼女がいなければならないとでもいうかのように。それは不自然なほどに目覚ましい回復だった。
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