愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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運命の再会より

突きつけられる事実

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王城に着き馬車を降りると、出迎えてくれた案内役によって軍の訓練所に案内された。

今日会いに行くことは、ガブリエルも知っているのだから、怖気づくことはない。と思いながらも、ロメリアは何度も何度も「お父様?今日の私は可愛い?」「このドレス、色が少し薄すぎるかしら」と尋ねた。そのたびに公爵は「ああ、可愛いよ。毎日言っているだろう、ロメリア。お前はこの国……いや、大陸で一番可愛いよ」「ドレスの色が薄く感じてしまうのは、お前の容貌があまりに美しすぎるせいだ」と甘く優しい返答を返す。

そんな2人のやりとりを聞いていた案内役は「公爵が娘を溺愛しているという話は本当なんだな」と心の中でげっそりした。

訓練場の前に辿り着くと、公爵は「では、私がいては2人でゆっくり会話も出来ないだろうから」とその場を後にした。

その後「ではこちらへ」と案内されたのは、赤い煉瓦造りの塔のような建物だった。緑の蔦が伝うその建物は怪しげで堅牢な雰囲気を纏っている。

ロメリアはゴクリと喉を鳴らすと、なにやらその建物の中が少しざわついた。

それを訝しく思った案内役が「しばらくお待ちください」と言い置いて、中へ入っていく。

しばらく待っていると、中のざわめきが少し収まった。出てきた案内役は何やら神妙な顔をしてロメリアに申し訳なさそうに頭を下げる。

「申し訳ありません。ガブリエル様は今、王女様の用で呼び出されておられるようです。彼の友人と仰る方が言伝したいと申しておりますが、いかがですか」

ロメリアは訝しく思いながらも黙ってうなずいた。

案内役はもう一度中へ戻り、ガブリエルの友人だという人間と共に戻って来た。明るい髪色に、陽気そうな表情を浮かべた彼はリュダと名乗り「公爵令嬢におかれましては……」と長い口上を述べようとするのをロメリアは断ち切って言伝を伝えるように即す。

「彼は『約束をしていたのに、すまない。いつ戻れるか分からないから、また体調を崩す前に屋敷へ戻るように』とのことです」

気まずそうにするリュダに、ロメリアはガクリと肩を落とした。

王女様からの用だったら仕方ない。とそう割り切れるほどロメリアは大人ではない。大人どころか、むしろ王女は邪魔をしたかったのかと疑いたくなる。そんな人物ではないと会って知っているが、それでもタイミングがタイミングなだけに、ロメリアはいつものように癇癪を起したくなった。

(それにガブリエルもガブリエルよ。嘘でもいいから、俺も会いたかったとか言えばいいのに)

だがしかし、ロメリアは知っている。彼は思っていないことは絶対に言わない。

つまり、ガブリエルはロメリアに会いたいとは思っていないのだ。本心から。

何度突きつけられても認めたくない事実に、ロメリアは無意識に俯いた。
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