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必然の出会い
王女様
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「お初にお目にかかります。セレス公爵が娘、ロメリアと申します。以後、お見知りおきくださいませ」
「まあ、この方が公爵がいつも自慢しているロメリアね。素敵、本当に愛らしくていらっしゃるのね。どうか、顔をお上げになってくださいな」
鈴を転がすような声で、王女はロメリアに話しかけた。ロメリアは頭をあげる。ロメリアの桃色の瞳に、麗しの王女の姿が目に入った。
途端、ひどい既視感に襲われ、眩暈が起こった。
「ロメリア!?」
父セレスに抱き留められて、ロメリアは息を整える。
(……ここ最近、こういうことはあまりなかったのに)
ロメリアには何度か、このようなことが起こっていた。見たことのない風景なのに、妙に懐かしいと感じたり、違和感を持ったり。一体、どうしてこのようなことが起こるのか。ロメリアには検討もつかない。
「まあ、大丈夫?慣れないところで疲れてしまわれたのかしら。どうぞ、こちらへいらして」
優しい王女に案内されたのは、広い庭園だった。白い薔薇が咲き狂う、王女のために造られたと聞く庭園。
(花の香りに酔ってしまいそう……)
ロメリアは目の前を歩く王女─マリエンヌを凝視した。白色に近い金色の髪。ガブリエルとは違う、浜辺から見える美しく澄んだ海の色の瞳。優しく穏やかな性格がよく表れているその容貌。誰もが恋してしまいそうだ、とロメリアは思った。
「……ロメリア」
父セレスは、王女の話し相手とはなれない。しかし眩暈を起こしたロメリアを心配してか、なかなかその場を去れないでいた。
「大丈夫よ、お父様。もう行って頂戴」
「……王女様。この子はあまり身体の強い子ではありません。何かありましたらすぐに」
「ええ、分かっているわ。私も、私の侍女達も、騎士達も傍にいるから安心して頂戴な」
王女にそのように告げられて、セレスは安堵の息を漏らした後に、その場を去って行った。
「ふふ、いつもは議会で鋭い眼光と滑らかな弁舌で他者を圧倒するあのセレス公爵も、あなたの前ではあんなに優しい顔をするのね」
庭園に用意された席について、マリエンヌはクスクスと笑いながら用意されたティーカップに口をつけた。
「……王女様は、議会にも参加されますの?」
「ええ。最近は政治に興味がありますの……変だと言われるけれど、議会では国の色々なことが聞けて面白いのです」
「面白い……」
ロメリアは、頭の中で気難しい顔をした中年男性達が弁舌をふるう姿を想像した。しかも彼らが話すのは難しい政治の話だという。
(想像するだけで、眠くなりそうだわ……王女様って本当に、変わった方なのね)
そう思いながら、ロメリアは素直な感想を零した。
「私は、王女様のように政治に興味がわいたこともありませんので良く分かりませんわ」
ロメリアの感想にマリエンヌは目を丸くさせながらも、可笑しそうにクスクスと笑った。
「……?」
何か自分はそんなにも面白いことを言っただろうか。と、ロメリアは考えたがさっぱり分からなかった。キョトンとした顔をするロメリアに、マリエンヌはハッとして「ごめんなさい」と、照れ臭そうにしながら口を開く。
「ロメリアがとても素直な言葉をくれるものだから、嬉しくて。……どうか、わたくしのことはマリエンヌと呼んでくださいね」
「……では、マリエンヌ様と呼ばせていただきますわ」
「ええ、そうしてくださいませ」
王女は、優しくほがらかに笑った。
(考えていた以上に、マリエンヌ様は性格がいいのね。私とは大違いだわ。我儘を言って、お父様やお母様を困らせたことなんて一度もなさそう)
「ところで、私は天文学や、今は政治に興味がありますけれど。ロメリアはどんなことに興味がおありなの?好きなことは?」
「ドレスやお菓子、それから宝石が大好きですわ。……王女様みたいにあまり本を読んだりはしませんの。ほんの少し恋愛物語を読むくらい」
「まあ、素敵!私も恋愛物語はよく読みますわ!」
意外なことに、マリエンヌは恋愛に興味があるらしい。話を進めていく内に、ロメリアに婚約者がいることが分かるとマリエンヌはより一層、その瞳を輝かせた。
「まあ、この方が公爵がいつも自慢しているロメリアね。素敵、本当に愛らしくていらっしゃるのね。どうか、顔をお上げになってくださいな」
鈴を転がすような声で、王女はロメリアに話しかけた。ロメリアは頭をあげる。ロメリアの桃色の瞳に、麗しの王女の姿が目に入った。
途端、ひどい既視感に襲われ、眩暈が起こった。
「ロメリア!?」
父セレスに抱き留められて、ロメリアは息を整える。
(……ここ最近、こういうことはあまりなかったのに)
ロメリアには何度か、このようなことが起こっていた。見たことのない風景なのに、妙に懐かしいと感じたり、違和感を持ったり。一体、どうしてこのようなことが起こるのか。ロメリアには検討もつかない。
「まあ、大丈夫?慣れないところで疲れてしまわれたのかしら。どうぞ、こちらへいらして」
優しい王女に案内されたのは、広い庭園だった。白い薔薇が咲き狂う、王女のために造られたと聞く庭園。
(花の香りに酔ってしまいそう……)
ロメリアは目の前を歩く王女─マリエンヌを凝視した。白色に近い金色の髪。ガブリエルとは違う、浜辺から見える美しく澄んだ海の色の瞳。優しく穏やかな性格がよく表れているその容貌。誰もが恋してしまいそうだ、とロメリアは思った。
「……ロメリア」
父セレスは、王女の話し相手とはなれない。しかし眩暈を起こしたロメリアを心配してか、なかなかその場を去れないでいた。
「大丈夫よ、お父様。もう行って頂戴」
「……王女様。この子はあまり身体の強い子ではありません。何かありましたらすぐに」
「ええ、分かっているわ。私も、私の侍女達も、騎士達も傍にいるから安心して頂戴な」
王女にそのように告げられて、セレスは安堵の息を漏らした後に、その場を去って行った。
「ふふ、いつもは議会で鋭い眼光と滑らかな弁舌で他者を圧倒するあのセレス公爵も、あなたの前ではあんなに優しい顔をするのね」
庭園に用意された席について、マリエンヌはクスクスと笑いながら用意されたティーカップに口をつけた。
「……王女様は、議会にも参加されますの?」
「ええ。最近は政治に興味がありますの……変だと言われるけれど、議会では国の色々なことが聞けて面白いのです」
「面白い……」
ロメリアは、頭の中で気難しい顔をした中年男性達が弁舌をふるう姿を想像した。しかも彼らが話すのは難しい政治の話だという。
(想像するだけで、眠くなりそうだわ……王女様って本当に、変わった方なのね)
そう思いながら、ロメリアは素直な感想を零した。
「私は、王女様のように政治に興味がわいたこともありませんので良く分かりませんわ」
ロメリアの感想にマリエンヌは目を丸くさせながらも、可笑しそうにクスクスと笑った。
「……?」
何か自分はそんなにも面白いことを言っただろうか。と、ロメリアは考えたがさっぱり分からなかった。キョトンとした顔をするロメリアに、マリエンヌはハッとして「ごめんなさい」と、照れ臭そうにしながら口を開く。
「ロメリアがとても素直な言葉をくれるものだから、嬉しくて。……どうか、わたくしのことはマリエンヌと呼んでくださいね」
「……では、マリエンヌ様と呼ばせていただきますわ」
「ええ、そうしてくださいませ」
王女は、優しくほがらかに笑った。
(考えていた以上に、マリエンヌ様は性格がいいのね。私とは大違いだわ。我儘を言って、お父様やお母様を困らせたことなんて一度もなさそう)
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「まあ、素敵!私も恋愛物語はよく読みますわ!」
意外なことに、マリエンヌは恋愛に興味があるらしい。話を進めていく内に、ロメリアに婚約者がいることが分かるとマリエンヌはより一層、その瞳を輝かせた。
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