小悪魔令息は、色気だだ漏れ将軍閣下と仲良くなりたい。

古堂すいう

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番外編②

自分自身

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姉様は僕の腕を引いて、あちらこちらと露店を巡り、目的とは全く異なるものばかりを物色する(主に僕の服)。姉様とは趣味が合うし、一緒に王都まで来て買い物をするのは久しぶりのことだから、正直言ってものすごく楽しい。が、このままでは今日中にシモンへの贈り物が見つからない。それは困る。明日シモンと会う予定だから、今日中に決めなくてはならない。本当はもっと贈り物を選ぶための時間があったのだが……あれかこれかと侯爵領の大きな街にある露店で決めかねている内に約束の日間近になってしまった。

ええい、仕方がない。こうなったらシモンと会う日より1日前に王都に行って、そこで決めてしまおう!と考えたわけである。人間追い詰められれば意外とすんなり結論を下せるだろう、と。

そして同行するのは例のごとくリディアだと、そう考えていたのだが……どういうわけか姉様がついてきてしまった。

「ねえ、ねえエリスちゃん?あの衣装本当にあなたに似合いそうよ?」

名残惜しそうにする姉様に、僕はもう一度その服を見る。

「……はあ、分かったよ。あとで着てあげるから、今は贈り物を探すのが先だろ?」

言い返すと、姉様はさも不思議なことを言われたというような顔をして目をぱちくりさせながら僕の顔を見つめた。

「まあ、エリス。私はずっとシモン将軍への贈り物をちゃんと考えているわよ?」

一体何を言い出すのか。と疑問が過ったがすぐに姉様の言いたいことを理解してしまう。

「へえ……そうなのかー」
「ええ、私にはねえ、シモン閣下が何よりも喜ぶものが分かるのよ」
「……着飾った僕自身を贈れとか言うんだろ」
「分かってるじゃないの!エリスちゃん!いいこと?愛する人自身に勝る贈り物なんてこの世にはないのよ!」

それは確かにそうだろう。と納得できる部分は大いにある。僕だってもしシモンが贈り物として彼自身をくれるというのなら涎を垂らし、両手をあげ、拝みながら狂喜乱舞するだろう。

だがしかし!

『僕自身が贈りものなんだ。受け取ってくれるか?シモン』
『ああ、もちろんだ、エリス。こんなにも嬉しい贈り物はないよ』

なんてやりとりを大真面目な顔で、それも色気たっぷりにやり遂げられる自信が僕には全くない。

いや心を無にすれば出来るのかもしれないけども。

途中で赤面して逃げ出すのがオチだ。こういうことは恥ずかしがってはいけないのだ。中途半端なことをするなら、最初からやらない方がいい。

「今回はやめとく」
「えー?残念ねえ」

肩を落とす姉様の肩をぽんぽんと叩く。

「本気でそれやる気になったら姉様に相談するよ」

僕がもう少し大人になって心に余裕が出来たら、いずれは。

「ほんとに?」
「うん。はい、じゃあ、贈り物探しに付き合って」
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