小悪魔令息は、色気だだ漏れ将軍閣下と仲良くなりたい。

古堂すいう

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番外編①

シモンの回想……相手

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「どなたなのです?」
「あの子の幼馴染でいらっしゃるカトレア様ですわ」

なるほど。エリスと親しいカトレア嬢か。彼らが幼馴染であることはよく知っている。だが、人選としては無難であると言えよう。エリスとカトレア嬢とは家格が釣り合っていて、とても仲が良いように見える。婚約者としてこれほどまでに最適な人間はいないだろうと思えるほどに。だが、あの2人の様子を見ていると、例え恋愛経験などなくても互いに意識していないことが分かってしまう。誰の眼からもそう見えるので、おそらくこの場にいる招待客の中には「つまらない」と鼻を鳴らす者もいるだろう。逆に令嬢達は、ホッと安堵の息を漏らすかもしれない。

「あの子ったら、16歳にもなって恋人もいない上に婚約者すらいない。……まあ、私が言えたことではないのですけど。お母様がお見合いを勧めても全く興味を持たないんですのよ。学園にも好きな子の1人もいないという。ならせめて、今回エスコートするお相手はカトレア嬢ではなく、エスコートして欲しいと誘ってくださったご令嬢の中から1人選んではとお母様が提案しても、首を振るばかり」
「あなたの弟君は本当に女性から人気のご様子ですね」
「……ふふふふふ。我が弟ながら器量も性格も群を抜いて素晴らしいですから。婚約者のいらっしゃらない令嬢方からは何と50通以上のお手紙が届きましたのよ。まあ、あの子はあのような性格ですから1人1人にお断りの手紙を書いて送っておりましたけどね───……まるで誰かのために無垢でいようとする天使のようだと思いませんか」
「……」

ローリエ嬢は、意味深な視線を投げて寄越した。それに対して言葉で返すことはせず微笑み返すと、彼女は見るからにつまらなそうにしながらも、気を取り直したのか、胸を撫でおろす仕草をして見せる。

「まあ、情けないことですけれど。どこか安心してもおりますの」
「安心ですか?」
「ええ。あの子は気が強い割に、情の深すぎるところがあって、一見して分かりにくいですけれど非情に脆いところがある。自分で分かっているようだけれど、人を切り離すことが出来ない。つまり、貴族当主としての素質はありません。だけどあの子は知っての通りこの世の誰より美しく、いつも堂々としておりますから……上辺だけしか知らない人間はあの子を完璧だと勘違いする。そんな上辺だけを見てあの子を支えにして寄りかかろうとするような方を選んで失敗してしまうよりは良かった、と。そんなことを思ってしまいますのよ」

大輪の薔薇のように瑞々しく笑うローリエだったが、すぐに神妙な面持ちで、こちらへ視線を流してくる。

「──……あなた様になら、弟を任せられるのに。早くしないと、あの子はあなた様への気持ちを完全に封じ込めて、この先も1人で生きていく覚悟を決めてしまうかもしれない。あの子は脆い。だけど、弱いなんてことは決してない」
「そんな──……」

そんなことはさせない──……そう、答えようとした時、大広間にざわめきが起こった。
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