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恋人期間

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「アラン?わたくしの恋人は──……彼だけよ」

ミレーユは視線を少し上げた。シェルディ達は、その自然に誘われるように背後を振りかえる。

「おや、どうしてこんなところに留まっているんだ?」 

 首を傾げながら問いかけてくるのは、垢抜けた紳士──エドモンドだった。

彼は元々気品のある人なのだが、正装などの堅苦しい衣装を好まないため、いつもゆるりとしたシンプルな格好ばかりしてきた。それはそれで似合っていたし、彼の纏う退廃的な色気にはぴったりだった。


しかし今日の彼は、どういうわけか、きちんと社交界用の正装を身に纏っている。胸元を着崩してはいるが、それ以外はどこも緩めてはいない。無精髭もしっかり剃っていて、退廃的なオーラはなく、若々しさが際立っていた。

元から持った気品と、精悍な顔立ちは見る者の目を圧倒する。

彼は確かに王族の人間であった。

「……今日は、どうしたことなの」

 ミレーユが問いかけると、エドモンドは笑う。

「どうしたのって、お嬢さんが参加しようと誘ってくれたんじゃないか」
「違うわ、その格好のことよ」
「ん、ああ……」

エドモンドは自らの格好を見下ろして、苦笑を零した。

「あなたは美しいからな。その隣に立つんだから、少しでも若く見せた方がいいだろう?」
「……あなたでも、そんなことを気にするのね」
「そりゃ、気にするさ」

と、エドモンドはのんびりと答えた後で「それで、なんでこんなところで留まってるんだ?」と問いかけながら、彼はやっとミレーユの周りに集まる令嬢達に視線をやった。

顔を赤らめ、エドモンドを凝視していた令嬢達は慌てて取り繕い「ご挨拶申しあげます。私達は──……」と1人1人名乗ってゆく。

エドモンドは律儀にもそれらの挨拶を断ることもせずに聞いていた。

「へぇ……随分と立派な家柄の方々ばかりだ。皆、お嬢さんのご友人かい?」

と、エドモンドが屈託のない笑顔で聞いた途端、令嬢達の顔は真っ青になる。

彼は、ミレーユに同じ年頃の友人がいないことを知っていた。

それなのにこんなにも大勢の令嬢にミレーユが取り囲まれているのは、あまりいい理由ではないだろうと察しがついていたのである。

これは、大勢で1人を口撃しようとする令嬢たちへのちょっとした嫌みだった。

しかし、令嬢達はそんなことを知る由もなく、この目の前に立つ「いい男」に少しでもいい顔をしようと歪な笑顔を浮かべる。

さあ、彼女達はなんと答えるのか。

エドモンドが蛇のように待ち構えていると、意外にもその問いに答えたのはミレーユだった。

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