婚約者が愛していたのは、私ではなく私のメイドだったみたいです。

古堂すいう

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王宮

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「……え、私を茶会にですか?」
「ええ、そうよ。あなたは気立てもいいし。王宮に連れて行っても問題ないと思って……。どうかしら」

パーティーから一夜明けて。ミレーユはさっそくエリーを茶会へ連れていこうと思うのだが。と、本人に提案してみた。

ミレーユは用意された茉莉花茶を嗜みながら、そっとエリーの様子を伺う。彼女の白い頬は僅かに朱色に染まっていた。滑らかな白皙の美貌が、思案に浸る様をじっくりと見守る。もう一押しかと思い、ミレーユはとびきり優しい声音で、彼女に声をかけた。

「……王宮には貴族の方達がたくさんいらっしゃるんだもの。不安に思うかもしれないけれど、あなたは気立てもいいし、なにより教養だって幼い頃からずっと公爵家で施されたきたのよ?そこらの令嬢よりよほど気品もあるわ。あなたなら皇子にご挨拶しても何も問題ないと思ったのだけど……嫌なら、仕方がないわね。他の人に」
「い、いえ、お嬢様!私でよければぜひ、付き添わせていただきたいです」

エリーの言葉に、ミレーユはうっすらと微笑んで「そう。それは良かったわ。……エリ―はとても美しいから、きっとどこかの貴族様に見初められてしまうかもしれないわね」
「そんな……!」

エリーは瞠目しながらも、否定はしない。自分の美しさがどれほどのものなのか、彼女はきちんと理解している。彼女が幼い頃から公爵家で教養を学び、品位を身につけてきたことは事実だ。メイドとしておくには勿体ない。とお母様が呟いていたことも知っている。計らって、彼女をどこかの貴族の養子にしてもいいのではないかと、そういう話も出ていた。のだが……ミレーユの婚約者を奪ってしまった時点で、彼女の未来はすでに明るい方向には向かわない。

(憐れなものね……)

「さすがに、皇子との茶会の時に、あなたを同じ席につかせることは許されていないの。だからその間は、皇子が部屋を用意してくれるそうだから、そこで待っていて頂戴」
「はい、かしこまりました」

エリーは嬉しそうに笑った。信頼していた彼女の笑顔。だけど、そんな笑顔の中に僅かな「蔑み」が滲んでいることに、ミレーユはようやく気付いた。

彼女は何を勘違いしたのだろう。公爵家で教養を施されたことで、自らを貴族の令嬢だとでも思いこんでしまったのだろうか。ミレーユから婚約者を奪い取って、優越感に浸っているのだろうか。あるいはすでに公爵夫人になったつもりでいるのだろうか。全てなのかもしれない。

そんな歪なエリーの表情を見つめながら、ミレーユは熱くなった腹を抑えて表面上満面の笑みを浮かべてみせた。
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