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花籠の祭典
再会
しおりを挟む「……っ」
ふと、扉の外で複数の男の声が聞こえた。おそらく、セレーネを誘拐した男たちの声だろう。喉奥までせり上がる恐怖を必死に飲み込みながら、セレーネは部屋の隅に身体を寄せた。
「……ここ?」
女の声がした。
(え?)
セレーネは息を呑む。その声には聞き覚えがあった。
震える拳をセレーネは強く握りしめる。
なるほど、声の主が犯人なら辻褄が合う。彼女はやはり憎んでいたのだ。セレーネのことを。
その声は徐々に近づいてくる。複数の男たちを引き連れて。
声が止まると、同時に扉が開いた。
「……あら、本当に捕まえられたのね」
にっこりと歪な顔で笑い、金の髪を払うのは、セレーネの妹──……ミリーナだった。
彼女と顔を合わせるのは、あの日の婚約破棄の場以来である。
「……ミリーナ」
名を呼ぶと、ミリーナは嫌そうに顔を歪めた。
「お久しぶりね、お姉様。お元気そうでなによりだわ」
しとやかに微笑んではいるものの、その瞳の奥には虚無だけがある。
少なくとも両親に可愛がられていたはずの幼き日の妹は、こんな顔で微笑む娘ではなかったような気がする。
いや、それすらも実はよく思い出せない。
なにせ両親は、自らの娘が大衆の場で婚約破棄を言い渡され、恥をかかされているというのに救いの手1つ差し伸べなかった。
元々セレーネは、祖父であるエダンに育てられたようなもので、両親と妹との関係は希薄だった。
それはエルゲンと結婚してからも変わらない。希薄どころか全く関わりを持つことがなくなった。
だからすっかり忘れていたのだ、その存在を。
「ふふ、すっかり忘れていたでしょう?私達のことなんて」
全くその通りだったので、セレーネはうんともすんとも言わず、ただミリーナを見つめた。
すると何に苛立ったのかミリーナは、ズンズンとセレーネの目の前まで歩いたかと思うと、掌を振り上げて、セレーネの白い頬に打ち込んだ。
痛々しい音が、その場に響く。
「……っ!」
「ああ、忌ま忌ましい!あんたばっかり幸せになって……私達があの後どれだけ大変だったか!あんたがあの場で大人しく婚約破棄されていれば……おじい様の財産の半分は私達に入るはずだったのに!」
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妙に納得していまい、セレーネはふっと嘆息する。
「あなた達って昔からそうね。臆病なくせに強欲で」
「うるさい!」
癇癪を起こして、またしても頬を叩こうとする妹の手を掴んだのは、背後に控えたローブを深く纏った男の1人だった。
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