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聖女
遊び
しおりを挟む「だ、大丈夫よ……心配してくれてありがとう」
セレーネが微笑んでみせると、女の子は「そう?」と僅かに首を傾げた。
「ええ。それより、レーヌ様じゃないけど。私で良ければご本を読むけど……。どうかしら」
「え、いいの?おねえさん、読んでくれるの?」
「ええ。絵本なんて自分で読んだことないから、上手に読めないかもしれないけど。それでもいい?」
問うと、子供達は目を輝かせて「うんうん!」と頷いた。「じゃあ、絵本を持ってきて頂戴」とセレーネが頼むと、子供達はまたしても我先にと教会へ駆けこんで、たくさんの絵本を抱えて出てきた。
セレーネは周囲に子供達が座っていることを確認して、絵本を1つ1つ丁寧に読み上げていった。王城に巣食うドラゴンに囚われたお姫様と、そんな彼女を救うために王城へ赴く王子様のお話。小さな動物達が、合唱団を作って森の音楽会に参加するお話。森に住まう優しいおばあさんが拾った子犬の話。それはもうたくさんの本を読んだ。絵本を読んだ後は、かくれんぼをせがまれて、かくれんぼを。その次は追いかけっこを。
幼い頃から、エダンと一緒に様々な場所へ赴き遊んだセレーネだったが、こんな風に大勢と遊んだ記憶はなく、かくれんぼだの追いかけっこだのと言った遊びも知らなかった。
かくれんぼや、鬼ごっことは何か。とセレーネが問いかけると子供達は信じられないと目をいっぱいに開いて「じゃあ、教えてあげるよ!」とまるで先生になったかのようにセレーネに詳しく教えてくれた。
(かくれんぼと追いかけっこって……こんなに楽しいのね!)
セレーネは子供達と遊ぶ間、ほんの少し昔に戻ったような気がして嬉しくなった。
「あー!お姉さん捕まえた!」
セレーネは身長も歩幅も小さいので、全力で走っても、常日頃から走り回っている子供達に追いつかないことがある。それ故に全力で逃げていたのだが、走ってる途中で追いかけてきた子供が足にしがみついたので、セレーネは勢いあまってしまい、そのまま転んでしまった。
「……っ」
幸いにも、膝からこけたので、咄嗟に肘で支えて地面に顔がつくことはなかったが、ドレスには草や土がついてしまった。
「あ、おねえさん。大丈夫?」
見上げてくる男の子は、セレーネの顔を見上げた。
「だ、大丈夫よ。安心して頂戴。それより早く逃げないと。今度は私が追いかける番なのでしょう?」
「あ、そうだった!」
「そうよ、そうよ。さ、逃げなさいな」
「うん!」
男の子は元気よく頷いて、その場をトテトテと走り去っていった。その背を見届けて、セレーネはホッと息を吐く。ドレスをほんの少しめくって肘をみて見ると、わずかに血が滲んでいた。
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