聖剣使いの乙女は実は魔王の娘だった

桐夜 白

文字の大きさ
上 下
25 / 40
魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約

魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約 23

しおりを挟む
「私がシスターを虐めたという証拠は?
何処にありますの?」
 
 
 
エディリーンが大きくハッキリとした声でそう言うと、「そんなの決まってますわ!」と朝絡んで来た女子の筆頭が言い、「ねぇ兵士様!」と言った。
すると兵士達二人は持っていた槍に魔法を宿し、明らかに武装行為を行った。
 
 
 
「魔族なんて、滅ぶのが道理ってもんなんだよッ!」
 
 
 
ガラの悪い生徒が、金属棒に雷の魔法を集約させて、エディリーンめがけて放つ。
ソレをエディリーンは手を横に振り、かき消した。
ソレを見た生徒達が、悲鳴を上げる。
ソレは普通科もシスター科も双方だった。
 
 
 
「レイラ!」
 
 
 
栗色の髪をした、今朝一緒に朝食を摂ったシスター科の少女がエディーリンとレイラの斜め後方から声をかけ、エディリーン達は彼女を見る。
彼女は震えていた。
そしてエディリーンを見ると、背を向けて走り出して行った。
ソレに数人のシスター科の男女も続く。
 
 
 
「レイラ、離れていて。
ディプ、レイラを護って」

「カア!」

「エディー…!」

「大丈夫。
争いはしたくない。
人間との溝を埋めたいもの」

「…」
 
 
 
シスターレイラはエディリーンのソノ言葉を聴くと、兵士達とは反対の、茂みの方へと離れて行った。
景色も見通しも良くない為、ソコには数人のシスターしか居なかった。
ディプスクロスがレイラの肩に止まる。
 
 
 
「生徒諸君は無理をするな!
相手は結界内とはいえ、穢らわしい魔族だ!」

「大丈夫ですわ!兵士様!
もう応援の兵士様も呼んでいます!
あ…!ほらっ!!」
 
 
 
今朝絡みに来た女子がそう言うと、女子が指さした方から十数人の兵士達が走って来た。
兵士達はそのまま持っていた各々の武器に魔法を集約させると、生徒達もソレに続いた。
 
 
これは…、小さくともまさに人間と魔族の争いだった。
ただ言えるのは、魔族であるエディリーンは防衛及び回避をし、一切攻撃を加えていなかった。
人間という種族が魔法を使って、魔族という種族のエディリーンに攻撃を仕掛ける。
これはまさに、小さくとも人間と魔族の争いだった。
 
 
 
エディリーンはソレに悲しくなった。
 
 
──…人は、どうして争うのでしょう?
魔族は、どうして争うのでしょう?
民は、どうして争うのでしょう?
 
 
紅葉が舞うのが見えた。
ソレに何故か美しくも、物悲しい気持ちになった。

人は、魔族は、民は、いつから争い、そしてどうして憎み合うのでしょうか?
互いに神々を崇め、同じ大地に住みながら、どうして今日も争うのでしょうか?

私は知りたい。
誰もが争わない術(すべ)を。
そして実現したい。
コノ父から受け取った切なる想いを、現実にすべく。
世界が、平和でありますように、と──

紅葉が舞う。
赤紅と…。
 
 
兵士達が束になって連結魔法を生成し、ソレを放とうとする。

そんな時だった。
兵士達の連結魔法に別方向から別の魔法が加えられ、エディリーンがソノ魔法の筋の先を見た。
教師達だった。
周囲には普通科の生徒が居た。
 
 
 
「ついに騒ぎを起こしたな!
魔族め!」
「これだから穢れた蛮族は!」
「今こそ殺してしまう時だ!!」
 
 
 
教師達十数人が兵士達と連結魔法を結び、巨大な魔法となり今まさに放たれたソノ時、エディーリンは紅の双眸をカッと見開いた。

巨大な魔法がかき消される。
エディーリンはソレに目をさらに、驚きから見開いた。
 
 
 
──今のは……、私の魔法よりも速く…?
誰…?
誰か、明らかに強い者が私より先に魔法をかき消した!!
 
 
 
エディーリンが周囲を見回すのと、兵士達や教師達、生徒達が困惑するのは同時だった。

するとエディーリンが見回した先──栗色のシスター科の少女が走って行った方向──ソコからシスター科の男女と共に歩いてくるのを目にとめるのと、シスターレイラが「! エンテイラー国軍第一部隊隊長⁈」と言うのはほぼ同時で、ソノ場に居たエディーリン以外の誰もがざわつき始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

最後の思い出に、魅了魔法をかけました

ツルカ
恋愛
幼い時からの婚約者が、聖女と婚約を結びなおすことが内定してしまった。 愛も恋もなく政略的な結びつきしかない婚約だったけれど、婚約解消の手続きの前、ほんの短い時間に、クレアは拙い恋心を叶えたいと願ってしまう。 氷の王子と呼ばれる彼から、一度でいいから、燃えるような眼差しで見つめられてみたいと。 「魅了魔法をかけました」 「……は?」 「十分ほどで解けます」 「短すぎるだろう」

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...